With Determined Passion

□REVO.2
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名前は愛。オイラがさっきつけた。
年は本人曰わく13歳。"生まれたばかり"の割に同い年だ。
性別は女。見ればわかる。
装備は真っ白いワンピース。間違ってもウエディングドレスじゃない。

愛についてオイラが持ってる知識は、現時点ではこんなもんだ。
本人は至って平然としてるが、たぶんじいちゃんのことだから全部聞く。何から何まで全部聞く。詰問ってやつだ。
出来るなら(オイラの勝手な想像なのだがたぶん"別の場所"から来たんだし)不安だろうから手助けしてやりたいんだが、手札がこれしかないとちょっと無理だよなぁ。


「あの、愛…、じいちゃんたぶん色々聞くと思うんだが、」

「わかってる。大丈夫よ、なんなら葉も色々聞いてくれていいよ?」

「お、おう…」


案ずるより産むが易しとは言うが…本人よりオイラのほうがハラハラしてるって、ちょっとどうなんだ。
いやでも心配なもんは心配だ。
…うーむ、しかし愛の様子を見る限り、一人でなんとでも出来そうではある。


「ま、なんとかなるかぁ」

「ありがとうございます!」

「おう。…うん!?」

「あ、ごめんつい」

つい「ありがとうございます」って口走るってどういうことなんよ!面白いやつだなぁ愛は。
でもまぁ、うん、なんとかなるよなこの様子なら。


「そいじゃ行くぞ」

「うむ!」


次の角を曲がった先がじいちゃんの部屋だ。




*




「失礼します」

「じいちゃん、定まらぬ星を持つ者が来たぞー」


麻倉葉明。オイラのじいちゃんだ。
現麻倉当主。政界や財界にお客さんがたくさんいるやり手である。
父親の姿を殆ど知らないオイラは、筋がね入りのじいちゃんっ子だ。自覚はある。
母ちゃんもパートで出かけてることが多いし、ばあちゃんは青森だから、オイラを一番構ってくれたのはじいちゃんなのだ。
修行はあんま好きじゃなかったけど。


「来たか」

「定まらぬ星を持つ者……流石は高名な麻倉先生。葉の様子からもしやとは思ってたんだけど、私が来ることわかってらしたんですね」


(……ん?)


「はっは、世辞は良い。なかなかに頭の切れる娘のようじゃ。わしが何を知りたいか──わかっているな」

「私は何者なのか。何が目的でどこから来たのか。何故この場所を選んだのか。

麻倉の敵になるのか、否か」


(…なんか)


オイラと二人でいたときとは、愛の表情が違う、気がする。
こっちがビビるくらい無垢っていうか、子供みたいな綺麗な笑顔をする奴だと思ってたんだが、どうにも…


("お客さん"を相手にしてるときのじいちゃんと同じ顔だ)


「全てお話しますよ。…まぁ出来ることなら葉にしか話したくないんですけど、あなたは葉の祖父君。私の信用に足る人物です。幾らでも話しますよ」

「信用に足るか。その様子では葉のことは既に信用しているようじゃな」

「いいえ、信用なんかしてません」


(いいえ!?)


ショックだ…!名前寄越せとか言うくらいだから信用されてんのかと思ってたのに…!



「麻倉葉はこの世でもあの世でも唯一人、私が信頼する人なのですから」



「…うぇー…」

「何を照れとるんじゃ葉」

「ちょ、やめて!私まで恥ずかしくなるじゃん!」

「いや、だってよ…」


ほんとわかんねぇなぁ、こいつ。
なんでかオイラ超気に入られてるし、っていうかオイラのこと知ってたんだよな、たぶん。
うぇー、恥ずかし!


「こほん!あーじゃあまぁ、この流れで私がここに来た目的からお教えします」

「うむ」

「葉もちゃんと聞いていてね」

「うん」


いきなり真剣な顔(というか、"お客さん"用の顔)を向けられて、反射的に背筋が伸びる。




「私の目的は──麻倉葉です」




「…………」

「…………」

「…………」

「…………」


「……………あ、オイラかーーっ!」


「反応遅っ!」

「いやだって何言われたかわからんくてだな!」

「葉が目的、とな」

「ええ。これからするお話は非現実的でありまさに超次元です。が、全て真実──勿論証拠もお見せします。葉、葉もちゃんと聞いて」

「ちょ、ちょ、ちょ、ちょっとタンマ!」

「なしじゃ」


え、いやオイラが目的って。え?
いやなんとなくそんな気はしなくもなかったけどマジでオイラ目的とか、え?
オイラ目的で別の場所から来ちまったのか!?
オイラよくユルいユルい言われっけど今回ばかりはそんな余裕ねぇぞ…!



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