With Determined Passion

□ZERO
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「今までありがとう、ママ」


今日のために用意された白い衣装が風に靡く。
一言挨拶を残して。
もうすぐ私はあなた達の世界から消えてしまうけれど、どうぞお元気で。

もう会うこともなくなる友人達、これまで本当にありがとう。
ねぇ聞いて、とうとう叶うんだよ。
遂に手に入れたんだよ。
お別れだ。


「さだめに背きし時空の御子よ」

「はい」

「この先どんな苦難が訪れても、此処に還ることは叶わない。それでもよいな」

「それでもいいです」




"彼"と初めて会ったのは夢の中だった。

──未来を紡ぎし者達よ。

そう言って現れた"彼"は、数え切れない人の中から私を指差した。

──お前だ。お前の"心"が最も強い。お前に権利を与えよう。使うも棄てるも好きにせよ。

私が"彼"にもらったものは、魂の求める場所へ行く権利。
誰よりも強く私が望んでいたからだと、後に"彼"は教えてくれた。

未来を紡ぎし者達。
それはある意味で当たりであり、外れだ。
未来を創るのは私達ではなく彼らなのだから。
私達は、ほんの少し力を貸しただけ。


(ああでも、そうか)


こんなにもたくさんの人の力を以てしてこそ、完全版発売にこぎつけられたわけだな。

かくして"彼"は、私に覚悟と決意を求める。
世界の全てを棄てる覚悟。
もう一度生まれる決意。
何かを得るには、同等の対価が必要だ。
世界を超える対価はこの世界での未来。
力を得る対価はこの世界での過去。

よし棄てようと、あまりに即決だった私に"彼"は声をあげて笑った。

そうそれでこそ時空の御子。誰よりも強く想い躊躇なく棄てていける。と。


白いワンピースは、風に靡いてウエディングドレスのように見える。
あながち間違ってもないだろう。嫁ぎに行くことに変わりはない。


「もう一度確認する。好きにして、いいのね」

「好きにして構わない」

「運命に逆らって、生かすも殺すも選び、世界の道標を変えて──いいのね」

「さだめに逆らいし時空の御子。それがお前の"運命"だ。全て己で考え、感じ、決し、生きよ」


"ご褒美"だからと"彼"は言う。
途切れた世界を終幕へ導いたご褒美。
だから好きにすればいい。

とはいえ作品復活は私単体の力ではなく、まして完結はあの変態…失礼、大先生の力である。
果たして独占して良いものか──良いのか。
大切なのは想いの強さだと言うのなら、私が一番強かったというだけのことだ。
他の皆様には悪いが、ありがたく享受するとしよう。
こちらも相応の対価は払っている。


「春一番が吹き抜けた後の春雨、またその雨の上がった暁──良い日だ」


そう。
そしてまさに今日は月曜日。


「今日は死ぬにはいい日だ!ね、先代!」


"彼"が──先代、シャーマンキングが、笑う。
さぁいこう。
黄泉の国?いいえ違う。
きっと私がどこよりも深く呼吸の出来る場所まで。

多分そうはいないでしょ。
異次元トリップのために出来立てほやほやスカイツリーのてっぺんから落ちるやつなんてさ!


「まっさかさぁぁまぁぁにぃぃ!!おちてでざいやぁぁぁぁ!!」

「実年齢バレるぞ」


好きにしろ!
どうせ向こうについたら私は13歳で色白なあまいろ美少女だからな!



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