あなた

□ラララ、
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よりにもよって。


人の失敗するタイミングはだいたいそういうタイミングでやってくる。


すっかり昇った太陽を見て彼女は慌てて時計を確認した。とうに家に招くと約束した時間を回ってしまっている。


しかも、


(寝起きを見せてしまうなんて)


「疲れているみたいだからそのままで構わないよ」


きっちりと身支度をして花とお菓子をお土産に尋ねて来てくれた彼。そんな人に自分が見せた姿はとても褒められたものじゃない。


酷く落ち込んだまま縮こまって謝ると男は軽く笑ってまた「構わない」と告げた。


「今日は俺もちょっと疲れててさ」


外に行くのは今度にして今日はここで話でもしないか、と彼が彼女の隣に座る。
気遣ってくれているのだと思っても、疲れていると言った男の顔には少し陰りがあった。きっとその言葉は本当なのだろう。


「(それなら、今日は無理して来ない方が良かったんじゃないのかな)」


パッと心に浮かんだそれを彼女は言わなかった。
"来ない方が"なんていう嫌な響きの言葉を彼に対して絶対に使いたくないと思ったのだ。


「着替えるね」


「ああ、別にそのままでいいのに」


にこりと効果音が聞こえそうな程に甘く笑んだ男に彼女は私が困りますからと答えてそそくさと部屋を出る。
そうしてすぐ帰ってくると彼ははおっていたジャケットを脱いで目を閉じていた。昨日も仕事だったのかと起こすのを躊躇う。


とん、と肩を押してみると簡単にシーツの上に倒れる背中。


「こんなデートもたまにはいいですよね」



Lalala,How shall we tell it?



貰った花を花瓶に活けて、お菓子は冷蔵庫へ。
そして彼女は眠る男の隣で読みかけの本を開いた。


(寝坊もたまにはいいけれど、やっぱりちゃんと準備をして待ちたいものだから)


2009.0615

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