W・main story
□俺にとっての・
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結局俺は一目見るだけでよかった親父と獄寺に促されて竹寿司の敷居を跨ぐ事になった。
どれくらいぶりの我が家だろう?
全てが記憶のままで、俺を切なくさせる。
もう忘れたと思っていた些細な場所まで鮮明に思い出されて………部屋にいつも漂ってた酢の匂いとか、畳の青さとか壁の傷も襖の柄も全てが懐かしく俺の中で煌めいた。
「おい、武!」
「あ、ああ、何、親父?」
親父に声をかけられて俺はやっと我に返った。
かなりの時間、俺はキョロキョロと家の中のそこここを眺めて突っ立っていたみたいだ。そんな俺を苦笑いしながら親父が見ている。
「おめー、いくつになってんだ?その図体なら二十歳は越えてんのか?」
「あ、うん……24になった」
「24歳か!見た目は立派でいい男に育ったなぁ。……中身はちっとまだ情けねぇみたいだけどな」
腕を組んで肩を竦める仕草も昔のまま。俺の時代の記憶の中の親父よりは、少し若くて顔の皺は浅いけれども。
「……剛、俺等は約十年後の未来から来てる。でも、入れ代わりでこの時代の14の山本は未来に飛ばされてる」
獄寺が俺の傍らで簡潔に説明をしだした。
……が、しかし親父はそれを遮って、俺達に俺の部屋へ上がるように言った。
「消化に悪いから飯の前に難しい話は抜きだ。でも、俺が訳を聞いてもいいなら、是非教えてくれ。自分の息子に今何が起こってんのかは物凄く心配だし知りてえよ。………だけどな、それはお前らがおいちゃんの美味いチラシ喰ってからだぜ」
「お、やじ…」
「…武。おめーの部屋はおめーが散らかしてったまま片付けてねえから汚いままだぞ」
「あ…うん」
「でも散らかっててもおめえの部屋だ。例えお前等に少しの時間だけしかねえとしても……寛いでいきな」