W・main story

□俺にとっての・
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………本当は会う気なんかは一切なかった。
 でも、俺が過去に来てから一番最初にしようとした事は、思い出の縁を手繰る事だった。
 もう、失ってしまった日々に当然のように側にあった大事なモノを一目だけでも垣間見たかった。
 
 俺を過去に呼び寄せた恋人は………俺の行き先を知りながらも、何も言わずに黙って着いて来てくれた。
 いつもなら滑舌も良く『今優先すべきはソレじゃねえだろ!』と厳しく叱責をするボンゴレ十代目の右腕の彼は、俺を咎めもせずに好きにさせてくれた。
 
 ―――懐かしい思い出の町並を抜けて、俺は胸が引き絞られるように恋しい過去の風景に辿り着いた。
 そして少し離れた曲がり角で今も記憶にしっかり残る竹寿司を遠目に眺める。
 
 ―――俺の居た未来にはもう存在しない、俺の家。記憶の中の我が家。
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