Mechanical Hero

□crazy about the boss.
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アメリアは心配そうに店内を見回した。全く、おばさんときたら本当に無防備なものである。一度泥棒に入られたことがあったのだから、もっと警戒しないと…そんなことを考えていると、おばさんが「お待たせ、お待たせ」とニコニコしながら店の奥からやってきた。
「おはよう、おばさん。お店すっからかんにしちゃだめじゃない!また盗まれちゃうわよ」
「大丈夫だよ!アメリアがいるもの」
幸せそうに笑うおばさんの顔を見ると、アメリアはいつもつられて笑ってしまう。
「なあに?いいことでもあったの?」
おばさんに尋ねられたアメリアは、驚いたようにえっ、と声を上げた。どうやら図星だったようだ。
「いつもより生き生きしてる。彼氏からプロポーズでもされた?」
そう言えば、アメリアはくすくす笑って違うわよ、と言う。そして、彼女はぱっちりと大きな目を開いた。
「趣味ができたの。あることをね、個人的にだけど調べて、自分の答えを出そうと思って。」
いつに無く楽しそうに話すアメリアを、おばさんは興味ありげに見つめ返す。
「ふうん、なるほどね…なんだかよく分からないけど、良いんじゃない?」
でしょう?とアメリアは笑うと、おばさんからパンを受け取っていつもと同じ料金を渡した。
「はい、いつもありがとう」
「ううん、おばさんのパン、本当においしいもの!」

じゃあ、そう言って店から出て行くアメリアに手を振りながら、おばさんはさきほど路地へ消えていったジャンカーの二人組みを思い出した。
―おいしい!と、パンを食らう、少女か少年か分からない人物と、アメリアを知っていた金髪の男。

(――そういえば)
そしておばさんは、ふと思った。からん、とドアのベルが揺れて、アメリアで店から出て行き、新しい客が入れ違いに入ってくる。

(あの二人の名前、教えてもらってないわ)
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