Mechanical Hero

□Crash party
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廊下を早足で歩き、アレックのいる事務所まで向かう。後ろから大きなあくびをしながらアルウィスもついてきた。
「終わったんですか」
「あなたが寝ているうちにね」
ぷりぷりと、怒ったようにアメリアが言った。

そんなアメリアの後ろ姿をアルウィスはぼんやりと眺めると、にやりと口元に笑みを浮かべて彼女のすぐ横についた。
「アメリアさんって、モテますよね。」
そのアルウィスの言葉に、アメリアは「え?」と声を発して振り返った。
「いやだって――リンドーロもメロメロだったじゃないですか。」
「あんた…それはね…あいつはそういうことに関して慣れてんの。たぶんね。」
そう言って、アメリアはあきれ果てたような表情をすると、くるりと体を返してまた歩き出す。

「そうっすかねぇ。俺は、フィムもアメリアさんのこと、好きじゃないかって思うんすけど。」
後ろから聞こえる、ひとの心を弄ぶような、面白がったようなアルウィスの声。
(こいつ、いつから狸寝入りしてたのよ…!)
「言っとくけど…」
心底苛々していたが、アメリアは狸寝入りのことは口にせず、ビシッとアルウィスに言い放った。
「私、海外に恋人がいるわ。」
それを聞いたアルウィスの目が、驚いたように見開いた。
「それと、モテるっていうのは貴方の感違いだわ。どっちかって言うと、嫌われ者だとおもうわよ、私。」
言い切ったアメリアは、そのまま、廊下で世間話をしていた若い婦人警官達をきりっと見つめた。
「油売ってないで、その書類、さっさと処理しちゃいなさい!」
アメリアに言われた彼女たちは、ぶすっと決まりの悪い顔をして、返事もせずにブツブツ愚痴を言いながら立ち去った。またアメリアに怒鳴られた、と言う具合に。

アメリアは、「どうよ、わかったかしら?」というように、肩をちょっと竦めるしぐさをして、アルウィスを見る。彼は一瞬きょとん、と珍しい顔をしたが、すぐにいつもの人を小ばかにするような表情に戻った。
「まあ…アメリアさんに彼氏がいたってことにびっくりですかね。」
「失礼ね。ホントのことよ。こんな話で貴方の驚く顔を見るとは思ってなかったわ。」





そして今、報告書はアレックの手にあった。丸っこい、テディベアのような手は、わなわなと震えている。
「馬鹿者!」
彼は怒鳴る。こんな報告書を書きやがって!と。アメリアは分かってましたといわんばかりにうんざりとした顔をしていた。
「もうちょっと、現実的にかけんのか!これじゃ上が受け付けてくれるはずがないだろ!全てにおいてめちゃくちゃだ。第一、子供が鉛に変わったり、腕が刃物の人間が現れたり、三階から何も道具がない状態なのに、無傷で地上に着地できるわけがない!何かカラクリがあるだろう!」
「だから、ないんですよ。」
と、アルウィスがそっぽを向いて言う。
「何ィ!?」
カッとなって立ち上がり、アルウィスにかかろうとするアレックを、アメリアがまあまあ、となだめた。
「本当なんです。この眼で見ました。他に書きようがないんですよ。」
「じゃあお前らの目が狂っているのだ!!」
アメリアが心の中でムッとしたとき…いや、露骨に顔に出ていたかも知れないが…―事務所のドアが静かに開いた。
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