Sky Caribbean
□争奪
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((あぁ、こんなはずじゃなかったんだ…))
軍の客船に揺られながら、一人の軍服を着た青年は心の中で呟いた。
自分と同じ部隊の軍人達はすっかり打ち解けてわいわい話しをしている。
「おい、ロビ、あんまり憂鬱な顔すんなって」
その青年…ロビに柔らかな表情で話しかけるのはロビの所属する部隊の中尉である。
「ローレル中尉…僕、怖いんです」
ロビは俯いたまま言う。
「今、僕ら本当に地上にいるんですよね?」
「ああ、そうだよ」
ローレルはケロリと答える。
今、この客船は南軍基地から出発し、東軍基地へ向かおうとしている。ローレル中尉率いるこの部隊は南軍に本々居たのだが、東軍基地へと移動になったのだ。東軍へ行く船が出ると聞き、その船に乗せてもらっているのだった。そして今に至る。
「さっき聞いた話では、地上には地下世界を乗っ取ろうとしている空賊が地上には居るって話じゃあないですか…」
ロビはローレルに不安をぶつける。ロビには初めての地上だ。
「うん。襲撃されたときは俺たちも戦わなきゃいけないな。何せ、この客船には軍の御偉いさんが東西南北から集結して宴会中らしいし。俺たちの部隊は、オマケみたいなもんだよ。」
そう言ってローレルはへらへら笑った。
オマケか・・・と、ロビは心の中で呟いてみる。確かに、その御偉いさん達を守るために、この船には陸上軍が沢山搭乗していた。
「“オマケ”だからさ、俺たちはきっと空賊とは直にドンパチしないから安心しろって!下っ端だもん、俺たち!」
ローレルはロビの背中をばんばん叩いた。
「それに、空賊なんてめったにでねぇよ。襲うのは軍艦だけだって聞いたしな。俺たちの乗っているのは“客船”だから平気平気。」
それでもロビは不安で仕方なかった。
((あぁ、とにかく早く東軍に着いてくれ…!神様―――…!))
と、心から念じたときだった。
軍人が部屋に入ってきた。
「空賊が乗り込んだ!ローレル中尉!あなたの部隊も守備に就くようにお願いします!!」
その軍人はそう言い残すと、急いで出て行った。
「あーれれ…」
ローレルは、驚きつつ、その軍人の後姿を見ていた。
((ほぉら…!言わんこっちゃない!!))
ロビの顔は真っ青だった。