Sky Caribbean

□グランゼールの料理人
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上空からでは島は見えない。リーザー特製の“島隠し”という機会により、島は見えないようになっているという。海に下りて近づくと島はゆっくりと姿をあわした。
サカナも何度か色々な島に降りたことがある。空賊達はそこで食料を調達しているらしい。島の人々は陸を引き上げるために存在する空賊に対し、とても親切に接してくれる。

その料理人を迎えに“島”についたころ、サカナとライズは船の甲板に居た。

甲板の手すりの修理をして、手すりの色が剥がれてきたところは綺麗にペンキで塗りなおす。船にペンキや木材などは無いため、島に上陸したときにしかこのような作業ができないのだ。
「これ、いつごろから塗りなおしていないの?」
サカナがライズに問う。
「結構前だなあ…前にこの“島”に来たときっきりだから。あ、言っておくが、綺麗に塗らないとリーザーに叱られるぞ。はい、塗り終わりー」
ライズはそう言うと、ペンキの缶を不安定な手すりの上に置いた。サカナも終わり、同じところに缶を置く。
「あー、神経使った!」
ライズが左手で右肩を掴みながら右腕をまわす。そのたびに、ゴキッと骨のほぐれる音がする。
「ペンキ、結構余ったね。」
サカナはそう言いながら、船のエンジンの振動によって揺れる白いペンキの水面を見つめた。後で手を洗おう、そんなことを考えながら。

「ん…?」
急にライズが回していた肩の動きを止めて、眼下の港を見た。

「お、来た来た!ヴィッツ!」
そう言いながら、塗りたてのペンキがついた手すりを掴んで身を乗り出す。
ライズの目線を追ってみれば、そこにはサカナと同じくらいの歳の少年が大荷物をちょうど地面に降ろすところだった。

懐かしい…。2年ぶりに見た、グランゼールの船。少年は愛おしそうに船を見つめた。懐かしいこともあったが、そんなに愛おしそうに見つめるには理由があった。
「ヴィッツ――!」
船のタラップから、ローウェンとシリアが降りてくる。彼女は手を振りながら、ヴィッツと呼んだ少年に向かってかけてきた。
「シリア!」
そのヴィッツの嬉しい顔といったらなかった。
抱き合うのかと思えば、シリアはヴィッツの目の前で急ブレーキをかける。ヴィッツの表情が少し沈んだ。一人で思わず広げてしまった両手を、そうっと引っ込める。

「お久しぶりィ!」
シリアはニコニコと笑いながらヴィッツに言う。
「元気そうだな」
シリアの後ろからローウェンも続いて言った。
「はい!船長、お久しぶりです!」
一瞬沈んだヴィッツの表情は、自分の船長の顔を見たとたんに少し赤らみを増した。
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