Sky Caribbean

□星
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「でもな、」ライズが言った。「エレの言っていることも分かる。 俺達は、軍に大切なものや人を奪われた。」
―焼き跡、悲鳴、そして絶望感

――じゃあなぁ、――
そして、“あの人”の最後の言葉。


ライズの脳裏に過去の場面が過ぎる。彼はそれを思い出して、拳をすこし握り締める。
「軍に恨みがないと言ったら、嘘になる。沢山のものを奪われて、それでも恨みを持たない、なんていう偽善者でなんか、いられねぇんだ。あっちがやる気なら、こっちもやる気だ。」

だから――と、ライズは間をおいた。


「俺達が歯車を回すのを、軍がこばんで俺達を倒そうとしているのなら、俺たちゃ、戦うしかねぇんだなあ」
ライズは窓に映る雲を見つつ、呟くように言った。
「俺は、そのためなら人を殺ってしまう人間だ。」
ライズは包帯から目を離し、初めてサカナのほうを見た。ライズの張り詰めた瞳を、サカナは見つめる。
そして、ライズはふっと視線をそらすと表情を緩めた。
「――だけど、お前と、俺の考え方は違う。だからって、お前が俺達にあわせなくちゃいけねぇ訳でもない。サカナはサカナでいい。」
ライズは、いつも頭に巻いている赤い布を取り出し、腕の最近縫合したところに巻きつけた。そして、よし、と呟くと立ち上がる。

「とにかく、早く良くなれよ。」
そう言ってライズは少し笑った。
「以上!言いたい事、終わり!」
と、少し大きな声で言ったあと、部屋を後にした。

ライズは部屋を出た瞬間にロンドンに見つかったらしく、彼らの話す声が聞こえる。
「あ、見つけた!全く、どこへ行ったかと思えばこんな所に…」
「あ、見つかった。気が変わった。リーザーのところ行ってくる。」
「えっ、ちょっ、どういう風の吹き回し!」
会話が遠ざかっていくのを聞きながら、サカナは深いため息をついてベッドの上でうずくまった。
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