Sky Caribbean

□黒い船
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「軍艦?」
射撃室で、ライズはサカナに早速話をしていた。
「そうだ、サカナ!軍艦とドンパチするんだってよ!」
久々なんだ!嬉しそうにライズは言う。
軍艦はスカイハンターの船よりずっと大きいため、戦闘に時間が掛かる上に大掛かりなので、いつも撒いてしまうのだという。

「へぇ。」
サカナは銃撃の手を止めて、呆れた顔でそう答えた。棒読みである。その言葉に嫌悪がさすのを少し堪えながら。
「何その顔!」
ライズは言う。とは言っても、いつもそんな顔なのだが。こいつはこの船にきてから一度も笑ったことが無い。冷めた顔ばかりしている、とライズは感じていた。

サカナの顔には“嫌な予感がする”と書いてある。
ライズいわく、もうすぐ軍が来るというのだ。船長から聞いたのだという。ハイテンションとは裏腹にサカナはなんとか平常心を持続させるために練習場の窓の外に視線をやった。雲が流れている。少し高度が下がったようだ。

一方的に何か話しているライズの言葉を受け流しながらそれを見ていると、サイレンが響いた。
「来なすった!」
ライズは、サイレンの音に反応すると走り出した。
今日のライズの反応はものすごく素早いように感じたが…。そんなことを思いながらサカナもライズの後へ続いた。

階段を駆け上がり、甲板へ走っている途中の曲がり角でレアンと出くわした。
「レアン!」
サカナがスピードを緩める。
「おう!サカナ。」
レアンは横目でサカナを見ながら言う。
「なあ、軍艦とやり合うって本当に?」
「ああ、本当みたいだね」
サカナがそう答えると、そうか…と彼女は視線を落とした。
ふと前を見れば、すでにライズはいなかった。
「…嫌な予感しかしないんだ」
「……深く考えないほうがいいぞ」
サカナが呟くと、レアンがそう言ってくれた。

次第に甲板へのドアが近づいてくる…。
「サカナ、外へ出たらすぐに敵の船へ走れ!この船には戦闘が終わるまでなるべく戻ってくるなよ!」
レアンは外への扉の寸前でサカナに教えた。
(戻っちゃ行けない?)

サカナは疑問を抱えつつも、扉を開け放った。目の前に大きくそびえる黒い軍艦。スカイハンターの船とは比べ物にならないほどのその大きさに驚いたが、心を決めると軍艦へ疾走した。
「健闘を祈る。」
レアンはそういうと、軍艦に飛び乗り、軍艦の床を殴った。途端、メキメキという途轍もない音を立てながら、床が破裂するように飛び散った。

サカナは慌てて物陰に身を隠す。
(あっぶな…!!)

健闘を祈ると言われながら、レアンの攻撃で早くも命がけだ。彼女の手を見ると、見慣れないグローブをつけていた。

(あれも、リーザーが…?)
そう考えていると、腕に奇妙な感触を感じ、慌て横を見た。

「エレ!?」
自分の腕には、エレの鼻が巻き付いていた。よかった、エレか、とサカナは胸をなでおろした。しかし、エレの瞳は見開いて、ただ事ではないと訴えているように思えた。呼吸が速い。

「サカナ、替え弾を持ってきた…!」
そういうエレは、鼻でいくつかの替え弾のケースを抱えている。
「今日は軍艦だから、兵の量も多いんだ…!サカナ、絶対生きて帰ってきて」
サカナはエレの瞳を見つめた。張り詰めて、生きてと訴える青い瞳を。
「サカナ、死なないで。」
エレがそういったとたん、サカナとエレのそぐ傍で機関銃の弾が撃ち込まれた。
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