Sky Caribbean

□ハンデ
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空賊船へ戻ってくると、ライズが咄嗟に振り向いて、サカナーと叫びながらばたばたと走ってきた。
「お前、途中でいなくなっちゃうんだもんよ、焦ったよ!船長からお前のこと頼まれてんのにさ!って、お前その腕どうした!?」
「あ…これはちょっとさっき…―」
ライズは、途中でサカナとはぐれてからずっと気が気ではなかったのか、サカナの傷を見て驚いていた。

「なんだ、てめぇの連れか?熊野郎」
ヴィズが喧嘩を売るように横からライズに言った。
「うるせぇな、熊ゆうな!」
(クソ熊ってライズのことか…)
サカナは、このとき“クソ熊”の正体を知った。ぴったりかもしれないと思ったのは口に出さなかったが。
がみがみ言い争い始めた二人を見る限り、どうやらライズとヴィズはあまり仲が良くないらしい。言い合いにキリがついたのか、ライズは子供っぽい罵声をヴィズにぶつけてからサカナの傷口に視線を戻した。
「腕、ちょっと深くやられてんな…ヴィズ、てめぇ、敵とと仲間の見分けもつかないほど馬鹿になったのか」
ライズは真面目な顔でヴィズに言う。
「お前馬鹿だろ。しかも、この傷、刀傷じゃねえだろが。あきらかに弾の傷だろうが」目ェ腐ってんだな!
二人はまた言い争いながら、船内へ歩き出す。ヴィズも案外、大人気ないところがあるらしい。
サカナは呆れたような瞳で二人の背中を眺めた後、彼等の後を追った。ほんとうにあの二人はいつもああなのだろうか。

ヴィズとライズが船内へ入り、サカナが入り口のすぐ前まで来たときだった。背後に感じた気配に、サカナは身を強張らせた。後ろを見ると、黄色い髪の女がサカナの顔面めがけて、拳を振り下ろそうとしているではないか。
突然の事態にサカナは青ざめた。なんとか伏せて一発目をかわすことに成功するが、向こうは早くも体勢を立て直して二発目を食らわせようとしている。

靴が船床を蹴る音を聞いたライズとヴィズが同時に振りむいて、その光景に驚いたように目を広げた。
「待て!レアン!!そいつは仲間だ!」
ライズが咄嗟に叫んだおかげで、サカナの顔面は救われた。彼の鼻ギリギリで、拳はピタリと止まったのである。

「い…」
サカナは後ろの入り口の壁にピッタリと背中を合わせていた。
「え、あ、すまん!」
彼女は、ばっと拳を戻すと、顔を上げてサカナを見て言う。顔が真っ赤だ。レアンと呼ばれた黄色い髪の彼女は、ライズやヴィズより、少し年下に見えた。黄色い髪を後ろの大きなヘアクリップで留めている。活発そうな目は朗々と輝いていた。どうやら彼女は体術を使うらしい。身のこなしからしてそれは間違いないだろう。

「い、いや、そんな…!」
サカナは驚きながらも、撃たれた腕の傷口を抑えて言った。
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