Sky Caribbean

□戦線
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「行くぞ!」
ライズは、大声で言うと、一気にその船へ駆け出して行った。サカナは銃をしっかり持ち直し、震えをおさえるように手首を一度ぎゅっと掴むとライズを追った。
向うから銃を向けている軍人が見える。
ライズが足を踏み込んだと思うと、彼はスカイハンターの船に飛び乗ると同時にその軍人にとび蹴りを食らわせる。そして、横に居た軍人たちを機関銃で一掃した。サカナもなんとかそれに続いて船へ乗り込むことができた。ライズが倒した軍人をみると、昨日ライズが言った通り、本当に機械で出来ているようだった。

「走れ!」
そう声を駆けられて走り出す。自分たちを狙わずに通り過ぎてゆく軍人たちが目に入り、気になって後ろを見れば、彼等は次々と空賊船に乗り込んでいた。
サカナの様子を察したライズは心配するなと怒鳴った。
「うちには“守護神”がいる。」
守護神…?一体なんの事だと疑問に思いつつも、サカナは足を動かした。

目の前に軍人たちがかけて来る。ライズは機関銃を構えると、向うが銃を構える前に撃ち出した。空いた弾を捨て、また構えようとしたとき、ライズは斜め前に気配を感じ、苦い顔をする。どうやら、遅かった!と思ったようである。見れば、既に銃を構え引き金を引こうとしている軍人がすぐそこに居たのだ。一発食らう覚悟でいたライズは、銃声の音がしたのに体に痛みが走らなかったことに驚いた。
驚いて、隣を見るとサカナの銃からは煙が立ち上っている。銃声はどうやらサカナのものだったらしい。
ライズはそれを見て、ニヤッと笑う。
「やるねぇ、ルーキー。ありがとな」
ライズはサカナに言ってから走り出した。

サカナはその礼の言葉に答える暇もない。引き金を引いた手が震えている。自分が撃った軍人は、人間であるように思ったのだ。ライズを追うこともすっかり忘れて、自分が撃った軍人に近寄ってみれば、狙った額には一本の細い針が突き刺さり、軍人はいびきをかいて眠っていた。麻酔弾を込めたほうの銃を使ってよかったと安心した。どうやら、機械の軍人だけではないらしい。
(よかった、死んでいない)
そうほっとした矢先、近くで機関銃の音がしたので、ぴったりと船の二階甲板の壁に身を寄せた。

(数が多いな…これからどうする…?)
そう考えていると、聞き覚えのある声がした。

「あれ、サカナ!」
驚きながら、声のほうを見るとシリアがモップを持ってそこに居た。しかし、おかしいことに、自分より背が低いはずの彼女をサカナは何故か見上げている。
「し、シリア!何で、飛んで…―!」
サカナは「どうやって、ここまでモップできたのか」とか、いろいろ聞きたい事はあったが、取り敢えずそれだけ聞いた。
「名前、覚えいてくれたんだ!」
彼女は嬉しそうに笑うと、あ…これ?と足元を見た。
「これは、エアーステップっていうの。リーザーが作ってくれたんだ」
「あの、リーザーって…――?」
“リーザー”それはエレが言っていた人物。エアーステップのような機械まで作り上げてしまう人物…――一体どのような人なのだろう。

「リーザーは…」
シリアがそう言いかけたとき、周りをスカイハンターに取り囲まれてしまった。
「おっと…説明してる暇はないみたい」
シリアのモップがビィン、と音をたてて長い棒に変わったではないか。シリアは、一番近くにいたクルーの顔面を思いっきり突く。そして、その勢いで空中舞いながら他の軍人をなぎ倒した。
「サカナ!ここも、そろそろ危ないみたい!早く移動したほうがいいよ!生きててね!」
彼女はサカナに手を振りながら、もっとスカイハンターの船の奥へ行ってしまった。
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