Sky Caribbean

□灰色の瞳。青目の象。
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ローウェンはサカナを観察するように、しばらく視線を反らさなかった。緊張感と、沈黙が漂う。

そして、ローウェンはゆっくりと言った。
「来る気はあるのか、リィフィッシュ」
「はい!もうそりゃもう是非とも!」
ライズが答えた。
「…すこし、黙っいてくれないか。ライズ」
少々の沈黙の後、ついにローウェンがライズのほうに顔を向けて言う。その時のライズが少しショックを受けたような顔をした。

ローウェンはサカナに向き直ると言った。
「ここからでは見えないが、地上には“島”と呼ばれている、かつて高山の山頂付近だった部分に人が住んでいる。そこへお前をおろすこともできる。そこでなら、陸の復帰を待ちながら生活できるだろう」
それでも、ここに残るか?とローウェンは聞いているのだ。

しかし、サカナの本音は、ただ待つだけでいるなど出来ないと思っていた。何のためにここへ来たのだ、ともう一度自分の心に聞いてみる。何のためだ?自分だけの自由を得るために上がってきたのか?それだけのために、必死になっていたのか――違うだろう。
――サカナの頭にコアの言葉が蘇る。
行くんだリィ…!行くんだ!!
「――僕は…ここでは死ねないんです。どうしても、」
サカナははっきりとした目で言った。
「絶対に」
そして、また拳を少し握り締める。
「僕は、地上で平和に暮らすだけのために脱出したのではないんです。だから…この世界の秩序が元通りになるのなら、なんとしても、歯車を探します。そのために、僕は地上から出てきました。色んな人の気持ちを担いで。だから――」

サカナが自分の意思を告げたときから、少々間があった。何かを探るようにローウェンの灰色の瞳がじっとサカナを見ている。そして、彼はついに、重みのある声でこう言った。
「良い決心だ。リィフィッシュ。
地下から出てきて、突飛な話を聞かされて驚いたろう。信じてくれたことに感謝する」
サカナの目が広がる。緊張と安堵が同時にそこに存在していた。重みがある、何処か冷たいような声。その声、オーラ、ローウェンのすべてに圧倒されている。そして、ライズの、「船長に会った方が早い」という言葉が、今、とてもよく理解できる。

「ライズ、いろいろ…」
「船長!ありがとうございます!コイツはサカナって呼んでやって下さい!」
ローウェンが「色々教えてやってくれ」と言う前に、ライズはすごい勢いでサカナの後ろ襟を掴んで出て行った。
サカナが驚いて慌てている様子であるが、ライズは全くお構いなしだ。

ばたん!どドアが閉まった瞬間に、ローウェンはため息をついた。いつだって、ライズはそうだ、と。
静かに流れる雲に、ローウェン再びはその灰色の瞳をむけた。
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