Mechanical Hero

□Moving around
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「――お前」

天然パーマの男を、アイリッシュは唖然と見つめた。
一方、彼は帽子を被り直し、肩をすくめてみせる。

「アフロー!」
アイリッシュがそう叫ぶと、彼はうざんりしたように、どこか面倒臭さそうに振り向いた。
「うるせーな。これはアフロじゃえっての」
天パですけどなにか、と男は言う。

「お前は会う度しつけえの。…名前、忘れたとは言わせねえよ」
覚えてるよな?と問うように、男は片眉をくいと上げた。

「あんまり馬鹿にするなよ、ヒュー」

アイリッシュが答え、シニカルに笑ったとき、ミシッという野蛮な音が二人の鼓膜を振るわせた。ヒューというらしい男が、舌打ちをして眉間にしわをよせる。彼はすぐに行動しようと脚を引いたが、逃げる暇はなかった。
次の瞬間、二人の真上から鉄の弾丸が天井を突き破って落下してきた。
二人はそれぞれの悲鳴を上げながら身を動かし、なんとか跳ね退く。

アイリッシュは目の前で床に減り込んでいる鉄鉛を見て、“彼女”もいると言うことを確信した。

「危ねえっての」
ヒューがため息混じりに言っている。


「…あ、」
アイリッシュはハッとした。そういえば、彼は大丈夫だろうか。
「オスカー!死んだのかー?」
アイリッシュがあまりに不幸な言い方で呼びかけた。ヒューは「ひでぇ」と呟いた。

少々の物音のあと、オスカーが糸にぶら下がって天井の穴から下りてきた。
「あーあ、埃被るわ、カッコ悪いわ、カッコ悪いわカッコ悪いわで最悪じゃん」
彼はちょっと不機嫌そうに毒づくきつつ、靴を履いて埃を払っている。
「大丈夫だ。カッコ悪いのはいつもだから、オスカー」
アイリッシュがきっぱりと言い放った。

「お前らと一ヶ月ぶりに会っても、全然新鮮じゃないわ。変化が無いもん。」
呆れたような遠い目で、ヒューが言う。
「残念ながら」
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