Mechanical Hero

□Rat catcher
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その夜、とある会場でとある大会が行われていた。
会場の中心には開けた舞台。それをぐるりと観客が囲っている。舞台から遠くの者は双眼鏡を取り出し、舞台の上で繰り広げられている事を食い入るように見つめていた。

ががっ、と、爪が擦れる音がする。ふう、と荒い鼻息。必死で逃げる細かい爪の音――次の瞬間、響いたのは…
「ちゅう!」
鼠の鳴き声であった。否、断末魔。
鼠の死骸を“彼女”は放り投げ、すぐさま残る鼠を追い掛け回す。
「Back」
その声に忠実に従って、“彼女”は後ろへ振り向き床を蹴った。体をねじりつつ、空中で獲物をキャッチすると綺麗に再び降り立った。それから次々と鼠をかみ殺し、ついには舞台にいた鼠を全滅させてしまう。
りりしく舞台に残ったのは、一匹のテリア。犬である。

「お見事!」
司会が叫ぶと同時に拍手は喝采。高く鳴り響くのは口笛。
のそりと舞台へ上がってきた人物に、テリアは「きゃいん」と甘い声を出して飛びついた。
「最高記録です!2分13秒!と、いうことで優勝は――」
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