Mechanical Hero

□My Figaro
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スラムの夜は、眠らない。



「……フィガロ…」
「なんか変だよ…絶対おかしいよ…」

不安げに身を寄せあう双子に、方眉をぴくぴく痙攣させながらフィガロは言った。
「何がおかしい…」


「だっておかしいじゃないか!」
「ここはクラブハウスだよ!」

目の前には怪しい建物。ぼんやりと街頭に照らされている看板。リボンと女物のヒールがファンシーに描かれたそれは、薄暗いそこに自分を主張するかのように建っていた。
それは妙な甘い微香を放ち、夜の住人を誘っている――。




ああ、なんて華やかなレディ。目がくらむ。
左右に張り付く子猫は、甘えるような声色で話かけ、酒をついでくれる。
「お待たせいたしました、ロヴィルト卿。ご指名ありがとうございます、チェルシーですわ。」

ロヴィルトと呼ばれた男は顔をあげた。
柔らかい瞳、金色のショートの髪をフワフワに広げ、色付いた薔薇色の唇は弧を描いている。水色のコルセットドレスが、よく似合う彼女は、この店で人気のホステス。

「クラブベイビー・ドールへようこそ。」
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