Sky Caribbean
□影追い
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面影を探す。
貴方の、俺の頭に乗せた最後の手のぬくもりを頼りに。
―影追い―
富士島の慰霊碑の前に、一人の男がたたずんでいた。
静かに風が流れる。その風は、彼の短い髪をかすめる。
慰霊碑のある場所は、崖の頂上で、その向こうには海が見える。
芝生や野花が咲いたその崖の上に、何気なくある石碑をヴィズはずっと眺めていた。
「ヴィズ、アンタまたここにいたのか。」
すこしため息交じりでその男に呼びかけたのは、羅李だった。
「皆、それぞれ練習してっけど、アンタ何もしなくていいのかい。」
「…さっき、元海賊倭寇の輩と刀交えてきたところです。」
ヴィズは少し面倒くさそうに言う。彼は、よっぽどその慰霊碑に思いいれがあるのか、慰霊碑から目を背けない。
「…そんなにその石見つめていたって、あの人は戻ってこないんだよ。」
「………」
ヴィズは黙っていた。
「未練たらたらだね、アンタも。」
「…………」
それでも、何も言わない。
しばらく沈黙が続いた。
背後のひまわり畑が風に揺れる。
「裏切り者は…?」
羅李はポツリとつぶやいた。
「大嫌いだ…!」
合言葉のようにそれに返す。
ぎりり、歯を食いしばる音を聞いた。