Sky Caribbean
□風祭り
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――世界のスカイカリビアンの住人に告ぐ――
富士島の集落の一角で、トンボのロボットが、インプットされた情報を告げている。
「――以上、シヴァージ一味ィイイ――!」
どうやら、風祭りに参加する者全ての人名を読み上げているらしい。ちなみに相変わらず震えた声である。
「続いてぇえ――!グランゼール一味ィイ――!」
トンボはグランゼールの人名を読み上げ始める。
「おっ、きたきた。」
それに反応したのは、まだ幼い二人の子供と戯れながらそのトンボの情報を聞いていた男だった。
「ローウェン、リーザー、エレ…」
名前が読まれ始めると、男は子供達に「しーっ」と、合図をして静かにさせた。「しー」をされた二人の幼い少女と少年は口を手で覆う。
「ヴィッツ、シリア、サカナぁああ―――!!」
最後の“サカナ”という言葉を聞いて、男はニコリと笑って言った。
「あはは、やっぱり来るんだ。羅李さんが言ってた子!楽しみだなあ!」
「父ちゃん、魚がくるのぉ?それ、お祭りでみんなでたべるう?」
そう聞いたのは少年の方だった。
「うーん、魚っていっても海のお魚じゃないんだなあ」
男は自分の息子を抱き上げた。
「じゃあ、なんのお魚ぁ?」
少女は自分の父親の足に抱きついて、男の顔を見上げるように聞くと、男は自分の娘も片方の腕で抱き上げる。そして、空を見てその質問に答えた。
「空のお魚かなあ。」
「空の…」
「お魚…」
子供達は別々にそう呟くと、初夏のにおいを漂わせる空を見上げた。