Sky Caribbean
□涙
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「もうちょっと離れろ気持ちワリィイイ!!!」
ライズは改造兵を蹴飛ばして怒鳴った。
「それは改造兵へ向けてる言葉か!?俺に向けてる言葉か!?」
その背中合わせになっている、背中越しのヴィズが言う。
「両方だッ!!!俺の後ろに立つなイワトビィイイ!!!」
「仕方ねぇだろ!結局このポディションが一番戦いやすいんだよ熊がぁあ!!」
二人が怒鳴りあっている隙をみて、改造兵が襲い掛かってきた。しかし、いくら喧嘩の最中といえど、二人はハッとして改造兵を切り捨て、打ち捨てる。
なんだかんだと戦闘時には愛称がいい二人である。
「おい、サカナいねぇぞ」
ライズは機関銃の空弾を捨てて言った。
「気づくのおせぇんだよ、脳みそないのかテメェは…!」
ヴィズが言い放つ。
「軍の策が分かった。」
ライズはそのヴィズの発言に、眉間を寄せてしかめっ面をする。
「一対一で戦って、確実に“グランゼール一家”を滅ぼすつもりだぞ。やつら。きっとサカナを俺たちから上手く引き離して、潰していこうって策だろう。」
ヴィズは背後に迫った改造兵に×印をつけるようにきりつけた。
「じゃあ助けに…!!」
「馬鹿やめとけ。」
「何でだよ!サカナ死ぬかもしれねぇんだぞ!?」
ライズが怒鳴るようにヴィズに言った。
「この量の改造兵が一気に船長の所に襲い掛かったらどうするつもりだ。」
ライズは悔しそうに舌打ちをする。
「今はサカナの健闘を祈るだけだ。」
「よくきた、銀龍。」
軍艦の甲板の奥にアルエは居た。
「おや、珍しいこともあるな、お前が怪我をするとは…」
ローウェンは、ここにたどり着くまでに傷を何箇所か負っているようで、腕からは血が滲んでいた。
「鍵を渡してもらう。」
ローウェンはそういうと、二本目の剣を抜く。
「それはこっちの台詞だ。鍵を返してもらおう。陸を完全に沈めるために。」
ローウェンがアルエに向かって走り出す。改造兵が、ガチャリと音を立ててローウェンに突進してくる。
ローウェンは改造兵をばっさりと切りつけ、アルエに剣を振り上げるが、アルエの銀色の筒によって止められた。キィン、と金属のぶつかり合う音がした。
「…どういうことだ。陸を完全に沈めるだと?」
ローウェンがにごった目でアルエを睨み付けて言う。
「そうだ。深く深く地中に沈めて、地球を真っ青にするんだよ。今は陸は完全に沈んでいない。“島”とか言う、山の頂上が残っているのだろう。それも沈める。空賊も滅ぼす。そして、地下世界をもっと広げることが―――」
セリオン様が望まれていることだ。と、アルエが続けた瞬間、銀の筒からドオン!と大きな音がした。
ローウェンは後ろに退き、体を伏せて、煙の中から襲ってくる改造兵を切り捨てる。
そして、再びアルエの目の前で、二人は剣と筒をぶつけ合った。
「銀龍、そんな怖い顔をしたって、俺は鍵をもっとらんよ。」
アルエはそう言ってニヤリと笑った。
ローウェンは何も言わず、もう片方に持った剣で、アルエの頬を切りつけた。
血が滴れる…
「脅しのつもりか銀龍。何度いったらわかるんだ、私は鍵を持っていない。鍵には癒す力があるのだぞ?たった今、お前が俺につけたこの傷が治らないということは――」
こいつは鍵をもっていない。じゃあ、誰が…?
疑問が頭によぎる。そしてもう一発、と言わんばかりにアルエの筒が燻るのを感じ、ローウェンは距離を取った。アルエの筒から爆発音がして、煙が周りを取り巻く。
アルエはついに腰の剣を抜き、ローウェンと剣を重ねた。
鍵は確かに二つあるはずなのだ…
押しつ、押されつつの異様な二人の戦いの最中、ローウェンは若干の焦りを久しぶりに覚えた。