Sky Caribbean

□記憶
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地中東軍。

その日、司令室に指揮をとる立場にある地位の人物達が集められた。
薄暗く、コンピュータの画面の光とぼんやりと小さな電気がついているだけの空間で、彼らは自分たちの大佐であるアルエからこれからのことについての指示を受けていた。


「大佐、本気でありますか。」

司令室にずらりと並ぶ、中佐や指揮官達。そのうちの一人がアルエに訊いた。

「“鍵”を2つも携えて、空賊を奇襲すると?そんな無茶な…ただでさえ鍵を1つとられているのに…!」

「本気だ。」

アルエは平然と答えた。銀色の筒を腰にかける。

「むこうの鍵を取り返したら、作戦通り残りの4つの鍵を合流させ、作戦を実行する。セリオン様のご命令だ。できるだけ早く、作戦を実行しろとな。」

その答えに、指揮官たちは目を伏せた。


「しかし…、大佐…!もし我々の鍵が2つとも取られてしまったら…」
「それって俺が弱いってことぉ?」

ある指揮官の質問をさえぎるように青年の声が上がった。

「俺が空賊に殺されて、鍵を取られちゃうってこと、アンタは心配してんの?」

フィリンガーが、司令室の椅子にどっかりと座り、くるくると回転しながら言う。大佐の前ではずいぶんと大胆な行動だが、誰一人として注意をしない。むしろ、彼の発言におびえているようにも見て取れる。アルエを除いて。
おそらくフィリンガーは、青年でありながらも相当の地位にいるらしい…

「そういうことなの?」
「い、いえ…けしてそういう意味で言ったのでは…」

もう一度フィリンガーに問われ、あわてて訂正するその軍人。
フィリンガーはニコリと微笑んだ。まるで、その軍人のリアクションを楽しんでるかのように。



「改造兵はたくさん連れて行け。空賊達は応援を呼べないようにSOS信号を使えない妨害電波を発してくる。」

アルエが軍人たちに向き直り、指示を飛ばした。

「最近、空賊達は潜伏していたが、貴重な目撃情報が入っている。これを逃せばチャンスはまた先延ばしだ。ヘマはするな。」

「大砲は準備しないのですか?」
「空賊に砲撃なぞ効かん。空を飛ぶ空賊艇だ。砲撃食らって落ちないよう設計されているに決まっているだろう。そんなことも考えられんか。」

アルエのその答えは、お互いの剣を交える戦いということを意味している。軍人たちの顔色はますます青くなる。
アルエがエレベーターの方向へ歩き出す。そこから地上にあがり、軍艦に乗り込むのである。

アルエの後をちょこちょことフィリンガーが付いていく。

部屋の出口でアルエがふと足を止めた。軍人達の方に横顔を見せるようにして首をひねる。

「レイチャーは死ぬが、リィフィッシュは殺すなよ。」

そう言うと、再び足を進めた。
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