Sky Caribbean
□機械仕掛け
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目 ガ 覚 メ ル ヨ
シリアは目を覚ました。俯いていた首を起こし、前をみる。視界は歪んでいた。
なぜなら、シリアは液体の入ったカプセルの中にぽかんと浮いているのだから。
どうやら、リーザーの部屋の奥らしい。ゆらゆらと視界がゆれているが、どこなのかは何とか分かる。
散らかった書類が一つの机の上にごった返している。それでも書類は机に乗り切れずに、床にも散らかっており、黒い床のはずなのに床は白い紙で埋まっていた。周りには見知らぬ機器ばかり。リーザーの姿はない。おそらく、この部屋の先の部屋にいるのだろう。
リーザーはこの奥の部屋を人に見せる事はほとんど無い。たとえ、この船の船長であっても、エレであっても…彼はこの部屋に他人が入ることを拒むのだ。この部屋に入ることができるのは、治療をしているときのシリアだけだろう。普通は、この先の部屋までしか入れてはもらえない。奥の扉は見えても、入ることはできない。
こぽこぽと、水の音がする。しかし、それはただの水ではない。器械を修復する液体だ。いつのまにか傷ついていた頬の傷がヒビになっていき、最後には傷口はぴっちり治ってしまう。
いつも修理中に着るキャミソールで、問題のはらわたはどうなっているのか分からないが、この水のおかげで治ってきているのだろう。
((あぁ、皆は私を治してくれたんだ…まだ、ここに居させてくれるんだ…))
そう思うとほっとして、あるかどうか分からない“心”がゆらりと揺れた気がした。
ゆらゆらと揺れる視界の中でシリアは、ごった返したリーザーの机の上になにか書類や科学書と異なるものを見つけた。
それは、写真たて。
写真たては、シリアのカプセルに背を向けていて、何の写真が入っているのか分からない。
ただ、シリアはあの厳ついリーザーも、写真を飾るのか…と意外に思っていた。
誰が写っているのかな…?
息子? 奥さん? 両親?
そもそも、リーザーに家族なんていたの?
グランゼールの人達?
まさか、本人の写真?
いやいや、リーザーはそんなナルシストじゃないわ。
誰?誰なの?誰が写っているの?
リーザーがそんなにも大事に思ってるヒト…
貴 方 は 誰 な の ?