Sky Caribbean

□倭寇
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「これまた…大変な収穫だな」
船長室からローウェンの声ではない声が聞こえた。しかしそこには、ローウェンの姿しかない。声はスピーカーから聞こえていた。
「そうだな、リーザー。」
ローウェンは別のスピーカーから何かの音声を聞いている。それこそ、サカナがアルエから奪った情報だ。
軍艦との戦闘があってから4週間が経った。
ヴィズが持ってきたピン型の無線機はサカナが奪ったものだとヴィズ本人から聞いた。この船に来てから間もないのに、よく奪えたな、と感心したものである。そして、アルウェイという情報屋にピンを送ると、中の音声記録などを解読して送り返してもらい、今に至っている。アルウェイいわく、解読するのが大変だったらしい。猛スピードで作業をしても4週間かかったと言って、彼は少しご立腹の様子だった。

「サカナとは、すぐれた少年なのか?それともただの馬鹿か…」
リーザーと呼ばれたその声は、そう言うと不気味に笑う。
ローウェンはそのことについて、何も言わなかった。ただ静かに、考えごとをしているように、情報を語る音声を聞き入っている。
サカナといえば、船へ帰ってきてから自分の運転と怪我と疲労でダウンしてしまったというから、ローウェンは申し訳なく思っている。サカナは周りの一味達のおかげで、一週間ほどで良くなったそうだが。

船内の警報が鳴り響いた。レーダーが機械音をたてはじめ、一隻のスカイハンターだと告げた。
「…アルエは楽しい楽しいゲームをしようとしているようだ…様子見に送ったスカイハンターだろうが…」
リーザーが笑いつつ話す。

「リーザー。至急、相手無線に妨害電波を飛ばしてくれ。仲間を呼ばれると厄介だ。」
ローウェンが言うと、リーザーが無言で無線を切る音がした。
そして、ローウェンは船内無線のマイクを手に取った。
「ライズ、聞こえているか。」
返事は無いが、問題児に呼びかける。
「実弾は使うな。」
この前の軍艦戦で、彼は許可を出していないのに銃弾を使ったらしい。彼が麻酔銃を使うローウェンの方針に不満を持っているのは少なからず分かっていたが、どうやら最近度が過ぎている。

耳を澄ますと、ライズが大喜びしながらすっ飛んでいく声が聞こえる。ローウェンは肩を落としてため息をついた、その時だった。

「ロー!居るんでしょう!」
先ほどのスピーカーの音声が乱れ、割り込むように女性の声がスピーカーから大音量で漏れてきた。

「悪いね、妨害電波が飛ぶ前にアンタの船自体のシステムに侵入させてもらったよ。残念ながら、あたしの声は聞こえるからね。」
女性は嬉しそうに話す。先ほど、ローウェンがリーザーに指示した妨害電波は、スカイハンターや軍艦の外部への無線使えなくすることで、本部の軍へ応援の連絡を不可能にするためのものだ。
それ故、こちらの戦闘態勢もリアルタイムで告げられない。この機能はもちろんリーザーが開発し、管理している。無線妨害電波を出してしてしまうと、ローウェンの船の周では仲間同士の無線と船内無線以外、外への無線がつかえなくなる…のだが…そんなシャットダウン直前に彼の船に入り込んできた船がいた。

相変わらず彼女は無茶ばかりする。
「羅李(らい)…またお前か…」

ローウェンが言ったその瞬間、周りに浮遊していたモニターが一つ増え、ニッカと笑った女性の姿が映し出された。
羅李と呼ばれたその女性は、頭を団子に結わき簪でとめている。和服をはおう様に着て、胸にはサラシを巻いていた。口にはキセルを咥えた彼女は、日系人に近い顔立ちをしている。

「ねぇ、ロー。凄い情報掴んだんだって?その餌分て頂戴。スカイハンター倒すの、手伝ってあげるからさ。」
話しの内容からして、ローウェンの同志…空賊だろう。

「随分と情報の回りが速いな。」
ローウェンは、見えない目をモニターに向け言い返す。彼の姿も羅李に見えているので、面と向かって会話するときと同じように接した。

「あら。あんたが情報掴んだことなんて、アルウェイから聞いて、もうみーんな知ってるわよ。アルウェイはどんな情報だったか教えてはくれてないけどね…スカイハンター倒すの面倒なんでしょ?それに、目的は同じじゃないのさ。」
彼女はニヤリと笑った。

「いいだろう。」
ローウェンが諦めたようにそう言った。

「ハリガネ。出して。」
羅李は返事を聞いて少し微笑し、隣のスキンヘッドの男…ハリガネに指示を出した。後ろでハリガネが「出合え出会え!」と叫ぶのが聞こえる。
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