Sky Caribbean

□戦線
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目は瞑ったものの、一睡もできなかった。地上へ出た興奮と不安、そして、親友を取り残し、一人だけ助かったこの上ない罪悪感が延々と頭をめぐって、自然と肩が震える。
眠ってはいないのに、意識はどこか遠くのほうへ行ってしまって、ほとんどその時間は無に等しかった。

今は何時だろうか、ふとそんなことを思い、頭から被った毛布から顔をのぞかせようとした時だった。けたたましい警報音が鳴り響き、サカナの鼓膜を振るわせた。気がつけば、軍人にいたときの名残なのか、警報に反応し、あわてて起き上がっていた。
心臓が早く鼓動している。
一体何事だ、どうすればいいのか、何をするべきなのか。情報を得るべく、咄嗟に窓の外の様子を伺うが、雲が流れていくばかりでよく見えない。

と、廊下から誰かが走ってくる足音を聞いた。サカナが振り返ると、ライズが息を切らして部屋へ入ってきた。
「サカナ、出れるか?敵襲!」
ライズは、嬉しそうにニタリと笑う。そんなライズの手には機関銃があった。サカナはそろり、とベッドから降りる。
「どうだ、お前もここにいるんならこういう戦闘に慣れといたほうがいいと思うぞ」

ライズは無理にサカナを連れ出そうという気はないようだ。けれど、ここで行かない、と言って引き下がったら、もう上がってこられないとサカナは確信していた。ここで動かなくては、ずっと動けなくなってしまう。
「行く」
サカナは上着を取ると、ライズに言った。ライズは、よし、と頷くと着いて来いと言って背中を向けて走り出した。

甲板へ続くドアの前でライズは足を止めると、サカナに弾を差し出した。
「安心しろよ、こっちは麻酔弾だ。持っとけ。できるだけスカイハンターを仕切っている頭と接触するんだ。情報を聞きだすか、それが入ってると思われるチップを奪う」
「分かった」
サカナがそう答えると、ライズは扉を開け放す。

すぐ目の前に、船が空賊船に付いて飛んでいるのが見える。
サカナは目を見張った。軍艦ではないその白い船…。ライズと初めて出会ったときに襲ってきたものと同じだ。軍艦よりもずっと小さい。
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