Sky Caribbean

□“彼”
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――できることなら信じたくなかった。また、この感触を、掌で感じる何て。



ライズに言われて着いてゆく。この船には沢山部屋があるな、とサカナは思った。その割に人は少ないようだが。
今歩いているところはどうやら空き部屋が続いているようだ。
(かつては沢山一味がいたのかな)
そんなことを思っていたとき、ライズが足を止めた。頑丈そうな鉄扉の鍵を開け、重々しい音をたててそれを押し開けた。

ライズに「こっちだ」と急かされて、サカナは部屋へ足を踏み入れた。そして、中を見た彼は思わず顔をしかめた。

無理も無い。中には壁が見えないほど沢山の銃や火薬が置いてあった。覚悟はしていたものの、やはりあまり見たくないものには変わりなかったようだ。
(やっぱり、そうか)

一方、ライズは、サカナの驚く顔を見て嬉しそうに笑う。そうして、あちらこちらをなにやらあさり始めた。
「あった、あった!ほら、サカナ」
ライズは軽々しくサカナに向かって銃を投げた。
「ちょっと…!」
サカナは慌てて受け取った。この男は、落ちたらどうなるとか考えないのだろうか。ライズはどうやら、サカナに銃を教えるつもりらしい。軍と戦うのだから、やはり武器になるものは必要になってくるだろう。

その拳銃は、小さいが重みがある。
「…ヴァレリア22…」
サカナはその銃を見て名前を呟く。
「おー、ご名答。良く知ってたな」
ライズはどこか嬉しそうに言う。
それを見たサカナは、話そうとした。自分のことを。ここにいることになった以上、隠し通せるはずがないのだから。
「知っているよ…だって僕は…―――」
「よーし、サカナ。お手並み拝見と行くか!」
ライズ自身、遮るつもりはなかったようだが、サカナの言葉は、途中でライズに遮られてしまう。ライズはすでにもう、自分の世界へ入ってしまったようで、さっさとその火薬くさい部屋を後にする。
サカナは置いていかれないように、彼の後をあわてて追った。この船はどれだけ部屋があるのだろう。ライズを見失ったら迷子になってしまいそうだ。


(参ったな…)
サカナはライズの後ろで眉根を寄せた。
(早く、言わなくちゃ)
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