Sky Caribbean

□Milky way
1ページ/14ページ

ローウェンは一人、溜め息のような深呼吸をした。

嫌な事を思いだしてしまった。
いや、“嫌な事”ではないのだ。グランゼールとその一味と過した日々は間違えなく、暖かくて幸せだった思い出だ。
そうに違いない。違いないのに、


脳裏にうつるのは貴方達のサイゴばかりだ…。


もし、もしも目が見えていたら、こんなに過去を覚えていなかったのだろうか。
あの日からの風景を失ったから、より、鮮明に悲劇を覚えている。
それはこの上なく心苦しい。
しかし、決して忘れてはならない。

そのために、あの花は咲いたのだ。

グランゼール。
私はどうしても貴方のような船長にはなれない。
部下と親しく対等に話すことが、これほど勇気のいることとは…

現に“慣れ親しんだ”仲間を失って深い闇をみたからか、私は部下達との間に壁を作ってしまっているのかもしれない。
自分にもしものことがあったら、仲間の心に傷を負わせまいと。
“慣れ親しんだ”関係にならなければ、部下達は心に傷を負わずにすむだろうから。なるべく、思い出を作らないように。
もしもの時、傷が軽くてすむように。

でも、そんな考えかたでは、あなたのような良い船長になれるはずがないのだ。


私は結局、空のような人になれずにいる。
貴方に憧れて、貴方のようになりたいと思っていたことは間違えないのに。


ふと、夜空に目をやった。

そこでローウェンは、嘘をついていたことに気づくのだ。


ああ、そうだった。
あの日から風景を失った訳じゃない。
そうだ、いつも探していた。

現にこうして――――今お前を見つけだすことができた。私の濁った瞳には、おそらくお前が映っているから。

少し姿勢を整えると、ローウェンは引き続き空を見上げた。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ