Mechanical Hero

□Crash party
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入ってきたその人物に注目があつまり、アレックが凍りつく。
「警視監殿…!」
そこに居たのは、警視監であるローガン・ウィルキンスであった。警視監は、スコットランドヤードの地位で言えば、上から第二位の立場である。つまり、アメリアの上司、アレックよりも更に上――お偉いさんということである。

「やあ、諸君。例のリンドーロ事件で様子を見に来たのだが。」
いかにも上司というオーラを放ちながら、ウィルキンスは近づいてきた。整えられた金色の髪。アレックよりも背が高く、がっちりと言うわけではないが体格もそれなりにしっかりしている。
しかし、アメリアはこの男が苦手であった。何を考えているかわからない瞳、理屈っぽくて、大きな事件にならないと動かない。

「アレック、君の担当だと聞いているが…―」
「あ、は、はい!そ、その通りです!あの、報告書なんですが…」
「出来ているのかね?」
ウィルキンスの問いに、アレックの冷や汗の量が増した。

「出来ていますよ。」
「貴様ッ!」
固まるアレックの手から報告書を取り、アルウィスが渡した。焦るアレックのことは完全無視である。
ウィルキンスの無機質な瞳に、めちゃめちゃな内容の報告書が映っている。一読し終えると、彼はふっと笑った。アレックが苦い顔をする。

「どちらにしろ、まずは壊れた取調室のドアと、壁、窪んだ地面を早々に直すべきだな。」
そう、微笑して彼は言うと、そのまま報告書を受け取った。受け取ってもらえないと確信していたアレックは唖然である。
「この報告書を書いたのは――アメリア・ロヴィーン…君か。」
名前を呼ばれ、アメリアは緊張した面持ちでウィルキンスを見た。初めて面と向かってみる、自分の警視監。アレックとはかなり異なった、高貴なオーラに圧倒される。

「交渉術で仲間が居ることも見破ったそうだね、お見事だ。」
「ありがとうございます。」
まさか褒められるとは思っていなかったので、アメリアは驚いたように御礼を述べた。
「取調べも君とそこの助手が担当してくれたと聞いている。予定外の夜勤で疲れただろう。今日は帰って休みなさい。また明日の朝、いつもの通り出勤すればいい。」

アメリアは再度、お礼を言った。予想外である。まさか、ウィルキンスからそんなことを言われるとは思っていなかった。最も、アメリアには彼がとてもスパルタな上司だというイメージもあったのだ。
アレックはここに残るように、と告げられ、苦笑いしながらもちろんです、と答えていた。
(結構、部下思いなのかしら…)
アメリアはふと、そんなことを考えた。
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