Original

□人形遊び
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「ただいま」

私の言葉が部屋に響き渡る。

返事をしてくれる人はもういない。

あれから、もうどれだけの月日が経ったのか…

もう数えるのもやめてしまった。

今では懐かしいあの人の笑顔。

まるで私の心の闇を照らしてくれる太陽だった。

「さあ、今日も可愛い服に着替えさせてあげるわね」

目の前には一体の人形。

あの人によく似ている。

「うふふ、とても可愛いわ。 やっぱり、どの服を着せても似合うわね」

黒いドレスに身を包んだ人形。

白く透き通っている肌を優しく撫でる。

でも、お話が出来ないのは残念。

「貴方とお話したいわ。」

固く閉ざされた唇。

その唇にキスをする。

冷たい唇に熱を帯びた唇が触れ合う。

まさにあの時の再現。

「ねぇ、今度は裏切らないわよね?」

貴方はあの時に別れようって言ったわね。

婚約者と結婚するからって。

嘘だと言ってほしかった。

他の人に貴方を取られるなんて、我慢出来なかった。

だから、私が……したの。

「私とずっと一緒に暮らしましょうね」

もう貴方は私のモノ。

ずっと私だけを見ていて。

これが私の人形遊び。

変わり果てた彼女の姿に人形の目から一筋の涙が流れた。

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