短編小説

□ねっ
1ページ/4ページ




 ――――夏。四季のなかで一番暑い季節である。なにをしていても暑い。じーっとしているのに暑い。クーラーがついて冷え冷えの部屋にいようとも外は炎天下で太陽がぎらぎらと容赦なく照りつけてきて、暑い。つまり暑い。クーラーでも暑いのに扇風機だけなんてもっと暑い。いやそれよりも。


「……………なんで節電なんだよ…………」


 ぱたぱたとうちわであおぎながら、銀時は微妙に生ぬるくなったいちご牛乳をあおる。なかの温度と外の温度が違うせいか結露でいちご牛乳が入ったコップを持ちあげると服に水滴がついてびちょびちょになった。しかもいちご牛乳というので冷えているからおいしいのであってこんな生ぬるいのはおいしくない。というか、店はクーラーがついていてもいいのになぜ一般家庭はついていてはいけないのか。
 普段は黒のインナーを着ているのだが今日だけはそんなことは言っていられない。ここ最近地球温暖化のせいなのかどうなのかは知らないが、夏であってもやたらと気温が低い日があったり低かったと思ったらいきなり暑くなったりして本当につらい。台風がくると冷え込むのに通り過ぎた途端熱帯夜になって炎天下になって熱中症になりやすくなる。着流しだけでぱたぱたと気だるそうにうちわをあおいでいる銀時は大きくため息をついた。新八と神楽は道場の方にいっているし(そちらの方が比較的涼しいので)、今日ばかりはあまりの暑さにだれも動きたがらないこともあってか銀時は万事屋にひとりでいる。だらだらと流れてくる汗をぬぐってうちわをあおぐが、いらいらするほど暑い。


「あ……っつー………」

 着流しであっても、空気がこもって汗をかいてしまう。自分ひとりだし、今日は結野アナ曰く「今年一番の暑さになるでしょう」とのことでだれもかれもが軽装をしている。蝉が鳴きつづけていることもあってか夏を感じさせるし、家のなかにいても感じるこの暑さはきっと屋根から伝わってくる太陽の光のせいだろう。新八も神楽もだれもいないし、今日は依頼も入っていないし入ったとしても断る。無理だ。銀時は裾を寛げて足を思いきり広げた。テレビのニュースでは「今年の夏コミでは熱中症対策として冷えぴたが流行っている」とか「今年の夏コミはまぎマギのコスプレが人気」など本当にどうでもいいことばかり流れている。………このテレビから冷気流れてこねーかな。


「……風呂にでも入るか……?」










 
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ