D*H

□ti amo
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「邪魔させてもらうぞ。」


少しばかり聞きなれた声が扉の向こうで言葉を放つ。

キャバッローネボスの右腕。
手紙の差出人でもある、ロマーリオ。

「どうぞ。」

彼を部屋へ通すべく、自らで扉を開ける。

大きくなったな、という彼の言葉をそこそこに受け止め。
机の前へ座るよう促す。

イタリア人である彼にとって、畳の上に座るというのは些か苦しいことではあると思ったが。
生憎、この部屋にテーブルと呼ばれる物は存在しないため、
座り方は気にしないでと、断りを入れた。

「それで?」

ロマーリオの後ろに立つ数人の部下が目についたが、気にしないようにして。
早々に話を聞きだした。

「いや、な。ちょっと今日はお前さんに頼みがあってよ。」

そう言う彼は、少しばかり歯切れの悪そうな声を出し。
珍しく、下を向いて話し出した。

「…ボスと…もう、会わないでくれないか?」

「は?」

その言葉をすぐには理解出来ず、僕は不信な表情を浮かべて聞き返す。

「雲雀恭弥。頼むから、もうボスには会わないでくれ…。」

搾り出すように声を出した彼の拳はしっかりと握られていて。
慣れない座敷の上で精一杯、力を制御しているようにも思えた。

その瞬間。

その部屋には複数の殺気が感じられ。

一気に空気が張り詰めた。

「…何なの、一体。」

その殺気に体が自然に反応して。
僕はそのまま、トンファを構える格好になる。


「…気かよ…。」

するとどこからか、呟くような声が聞こえ。

「お前はキャバッローネを潰す気か…っ!!!雲雀恭弥!!」


ロマーリオの後ろに立っていた部下達が一斉に僕に攻撃を仕掛けて来た。

訳も分からずに僕はその攻撃を受け止め。
自己防衛のために彼らを突き飛ばしたが。

更に攻撃を仕掛けられ。

僕は身動き1つ取れない状態になった。



相手はキャバッローネの幹部。
それも複数。

僕1人で相手に出来るものではなかった。


「訳が…分からないんだけど…。」

体の動きを封じられた状態で、声を出す。

僕自身の思考は完全に停止し。
今取り囲まれている状況を理解することが出来なかった。

それでも、僕を取り押さえるキャバッローネの幹部たちの顔は本当に真剣で。
冗談でこんなことを行っているのではない、と言うことだけは理解した。


「しらばっくれるな…。このsgualdrina!!」

幹部の1人が放った言葉。

その言葉を聞いた瞬間、先ほどしっかりと閉めたはずの扉が開かれて。

その向こうに、良く見知った顔が、血相変えて立っていた。



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