D*H

□ひとりぼっち
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授業時間も終わり、今日も放課後の風紀の仕事をしようと応接室へ向かった。
いつも通りに群れる奴らの風紀を正して。

そうして1日が終わるはずだった。

机の上の、携帯電話が鳴るまでは。


並盛中の校歌。
それを遮って、電話に出る。

相手は分かりきっている。

跳ね馬のディーノ。

不本意ながら、
僕の恋人。


「何。」

恋人と言ったって、何も甘い雰囲気を共有する訳ではないが。

それでも、話していて苦ではないのは、少なからず心を許しているからなのだろう。

この僕が。
まさか、他人に心を許すなんて。

今でも俄かには信じがたい。


それほどまでに、この跳ね馬との関係は想定外だったのだ。


「恭弥…。あの、な。」


いつもは一方的に話を進めるそんな彼が。
今日は違った。

たどたどしいと言うか。
何故か、言葉にするのを躊躇っているようで。


「何なの?」

早急に用件が聞きたくて、再び尋ねる。


言わなければ良かった。
言わなければ、避けられたかもしれないのに。

そうは言っても後の祭り。

次に彼の口から発せられた言葉に、
僕は息を呑んだ。




「別れて、欲しいんだ。」



携帯を床に落としそうになるのを必死に堪える。
目から出る涙は頬を伝い。
僕は言葉を失っていた。


「恭弥…?」


それから、彼が何かを話し始めた。

言い訳か。何か。
別れる理由か。


頭が真っ白になった僕の心には何ひとつ届かなかったが。

ただ、彼が酷く落ち着いていることだけは理解することが出来た。


「本気で、言ってるんだよね。」


そんな彼に対抗して、僕も出来るだけ平然を装って。
落ち着いた声で話をする。

「ああ。」

返ってきた言葉はそれだけで。

そのまま、電話は切られてしまった。



ツーツーという無機質な音を耳で聞き。
そのまま硬直する。

何を言った?

彼は、僕に何を伝えた?



別れる?

それって一体…。



様々な疑問が頭を巡り。

そして、1つの結論へと達した。





もう。
彼には会えない。





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