D*H

□Happy birthday
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「ぼ…ぼ…ぼん…。」

ぼん?

最近の恭弥はなんだかおかしい。

一生懸命本にかじり付いていたり。
知らない間にどこかに出かけていたり。

あまつさえ、意味不明な独り言を呟いている。


「…なんなんだよ、それ。」

不意に尋ねてみれば、

「なんでも…ない。」

いつものようにしかめっ面が返って来てしまう。


全くもって訳がわからない。

いくらキャバッローネファミリーのボス、跳ね馬のディーノでも、
こればっかりはお手上げだ。



そんな日が何日か続いた。



そう。
そんなある日、だ。


「ねえ、あなた、今日、暇でしょう?」


トレーニングの後の応接室で、珍しく恭弥が俺を誘う。

誘うって、別にやましい意味じゃねーぞ?

つまりは、今日空いてる?ってことなんだろう。
“暇でしょう?”って決めつけるあたりが恭弥らしい。

「暇…だけど?」

素っ気なく返事をした俺だけど、内心は嬉しくて仕方がない。

こんな風に恭弥が俺を誘うなんて、滅多にないことだから。

そう。もう、喜びのキスをしてしまいたいくらい。



だけど、そこは大人の理性。

「何?」

なんて、余裕ぶって聞いてみる。


「ぼん…。」

「ぼん?」


そしたら恭弥はすっと俺の正面に現れて。
少しの上目遣いで俺を見た。

ぼん…
そう呟いて、また下を向く。




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