D*H

□ti amo
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あなたを

誰よりも

愛しているから



【ti amo】


開け放しの窓から、心地よい風が吹き付ける。

その風を体に受けて。
僕は少し着崩れした着物を直す。

これから訪れる客人のための茶や、菓子を机に用意させ。
その後は、部屋に誰1人として通さないよう通達をした。

一番の部下である草壁を筆頭にその約束は守られ。

僕の部屋はしんと静まり返った。


「…雲雀恭弥に話がある、か…。」

客人を待つ形で、その場に正座し。

保管していた一通の手紙を取り出す。

今朝送られて来たこの手紙。
差出人は、ロマーリオ。

跳ね馬のディーノ率いるキャバッローネファミリーの幹部である。



“ファミリー”というものに違和感を覚えなくなったのは、いつからか。

初めは確かに戸惑ってはいたものの。
月日が経つにつれ、その世界観に自分自身も順応していった。

孤高の浮き雲になれ、と言われてから。
確か、10年。

自分自身胸を張って…という言い方は不適切であるかもしれないのだが。
もう立派な裏の人間だと言うことが出来る。

一通り、裏の事情も知ったはずであるし。
何より、教えてくれる存在がいた。


家庭教師である、跳ね馬のディーノ。

初めこそは、戦闘の教師であったが。
僕がマフィアになり、沢田綱吉の部下になると決めた瞬間から。
裏の世界事情の教師にもなった。

教えられたことは数多く。

ここまで知ってしまえば、もう表の世界には戻れないと覚悟するほどだった。


それにもう1つ。
彼は僕にとんでもないことを教えている。

“恋愛事情”

いつからそのような関係になったのか。
ありとあらゆる記念日を事細かに覚えている彼とは違い、僕自身はっきりと覚えてはいないのだけれど。

彼は確かに僕を愛し。
僕も彼を愛していると言える。

不覚にも、1人で居るときよりも2人で居るときの方が落ち着くのだから。

なるほど、恋愛というものは不思議なものだと感じる。


そんな彼と。
昨日も逢瀬を果たした。

場所は彼が日本滞在中にアジトとして使用している建物の一室。


2人で何気ないひと時を過ごし。

恋人同士の営みも果たし。

それなりに幸せな時を過ごした。




そうして、自宅に戻って来たのは明け方のこと。


その玄関に、一通の手紙が置いてあったのだ。


差出人の名前を見て、今までそのアジトに居たというのに。
何故わざわざ手紙を寄越したのかと疑問にも思ったが。

“ボスには秘密にしてもらいたい”

その一文を読み、納得した。



彼らはキャバッローネというファミリーの垣根を越えて。

この僕、雲雀恭弥自身に話があるのだ。



ふう、と1つため息をつく。

何の話があるのか。

想像がつくと言えば、彼らのボスのことであるのだろうけれど。

その内容については全く知る由もなかった。



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