8059・その他

□アイ・アム・ボス
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これは。

俺のせい、なのか?


【アイ・アム・ボス】


「それじゃあ、これで会議は終わるけど…。何か、意見とか…ある?」

会議というか、報告会というか。
ここ最近、月1で始めた集会。

ボンゴレ幹部の統率を計るためと、
各幹部の動きを俺が把握するために、このボンゴレのアジトで行っている。


俺が、ボンゴレの時期ボスだと聞かされて、もう10年。
リボーンに色んなことを教えられて。
気がつけば、十分過ぎるほど、こっちの人間になっていた。

当然。
もう立派な、10代目ボスになっていて。

こうやって、毎日幹部や他の部下たちと、マフィアとしての仕事をこなしている。



「特にないです。」

俺の質問に右隣に座る獄寺君がそう言うと、
他の幹部も頷いた。


「それじゃあ、お開きにしようか。ありがとう。」

その様子を見て、俺は会議の終了を決める。

それを合図に、みんなが会議に使っていた部屋を出ようとしたんだけれど。

俺は大事なことを言い忘れていたと、みんなの足を止めた。


「どうしたんだ?ボス。」


不思議そうに俺を見た山本が尋ねる。


「いや、今日はさ、みんな早くに上がっていいよ。このところ忙しかったし、久しぶりに飲み会でもしない?」

俺の部屋でさ、と付け加えるとみんなは少し笑顔になってくれて。

「よしっ!!それじゃあ俺は今日の仕事を極限に頑張るぞ!!」

お兄さんに至っては、大声を出して喜んでくれた。


こういうとき、俺は思う。

本当にいい仲間に囲まれている、と。

最初は勿論、マフィアのボスなんて御免だった。
それは“マフィア”という言葉の響きから、とんでもないものを想像していて。
人殺しやなんかを軽々と行ってしまうものだと思っていたから。

だけどそうじゃなかった。

リボーンの言った通り、ボンゴレは“いいもん”のマフィアで。
その気になれば、世界中の人を救えるのだと気付くことが出来た。

それもこれもみんなのおかげ。

みんなを信じて、みんなに信じられて。

俺はこの仲間のおかげでボンゴレの在り方に未来を見出すことが出来た。

だからこれからも、みんなには助けてもらいたいと思うし。
仲良くあって欲しいと思うのだけれど。




「…これは、どうなの。」


目の前で繰り広げられる光景を見て、俺は自分自身の思考に疑問を抱いてしまった。


あの会議の後。
みんなは持ち場に戻ってそれぞれの仕事をしてくれた。

そして、その後部下達に引き継いで。

約束通り、俺の部屋で飲み会を始めた。

までは良かった。


「…っちょ、おい…やめろって…っ!!」

「いーじゃんか、別に。誰が見てる訳でもねーんだしさ。」


酒が進むにつれて、酔っ払ってくるのは当然のことで。

元が友だちの幹部の集まりだから。
無礼講なんて当たり前。

こんな席では、みんな俺のことも“ボス”とは呼ばず、昔のように“ツナ”と呼び。

緊張感もまるでなくなるのも仕方がない。


だけど。

「…山本、そのくらいにしてあげなよ。」

「え?」

恋人同士の戯れを、ここで行ってしまうのはどうかと思う。


いつだったか。
山本と獄寺君がそういう関係かもしれない、と疑って。
調査の上に問い詰めたことを良く覚えている。

2人は頭を下げて俺に謝ったけれど。

俺は別に、それを悪いことだとは思わなかった。

寧ろ、幸せになればいいと応援したし
現に相談にだって乗っているつもりだ。

だけど。
許容はしていても。

「2人っきりのときにやって、それは。」

見せ付けられる周りの人間の居たたまれなさを、少しは理解して欲しい。

「じゅ…っ、10代目…!!違うんです!俺とコイツは何でも…っ!!」

「それはもう知ってるから、隠しても無駄だよ。」

いつまでたっても、獄寺くんは素直じゃない、と思う。
きっと、こういうところに山本は惚れたのだろうが。

やっぱり、元友だちとしては。
いや、今も友だちであることに変わりはないのだけれど。


…心底、扱い方に困る。


「あ、そうだツナ!今度さ、出来れば今月中がいいんだけど。俺と隼人、休み一緒にしてくんねぇか?」

ほら、こうやって。
少なからず任務にも支障が出てくるのだから。

「今月中?どっか行くの?」

「ああ、ちょっと花見にでも行こうかと思って。」

たまには日本人らしく、なんて笑う山本の隣で。
獄寺くんは困ったような顔をする。

その顔は、俺に対して申し訳ない、と言う顔なのだけれど。
その奥には少なからず、山本と一緒の休みを望んでいるようにも見えた。

「わかったよ、考えとく。」

そんな獄寺くんの表情に負けて。
俺は了承してしまう。

“頼まれたら断れない”

これだけは、いつまでたっても治らないんだな、と少しばかり昔を懐かしんだ。


「沢田!!俺にも休みをくれー!」

そしたら今度は酔っ払ったお兄さんがそんなことを言い出して。

「俺もお願いします、ボンゴレ。」

未成年なのだから飲んじゃ駄目だって言ったのに、ランボまで顔を赤らめてしまっていた。


そしたら、もうその場は“休みをくれ”の大合唱で。

そう言えば、ここのところ忙しくて、なかなか休みが取れなかったな、なんて考えた。


いや。

休んでばかりの人が1人。

いたような気がするけれど。





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