8059・その他

□同じ温もり
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【同じ温もり】


教師に説教をくらった。

まあ、理由なんて馬鹿みたいにあるのだろうが。
一番の決定打は机に両足を、上げていたことらしい。

授業終了後にでも引きとめてくれれば、10代目に聞かれなくて済んだのに。
あろうことかあのクソ教師は授業を中断させて、俺の目の前に立ち、礼儀についてのあれこれを語り出した。

科目は音楽。
皆でリコーダーを使い演奏しようとした矢先。

いつもはサボるその教科を、受ける気になったのは、今日という日をあまり、深く考えないようにするためで。
皆の中にいれば、少しくらい気分も紛れるだろうと、そんな考えがあったからで。

だけど。
何も真面目に授業を受けようとしていた訳ではないから、態度などに気をつける余裕も思いもなく。

つい、というよりは必然的に、楽な体勢だからという理由だけで、机の上に乗せた両足。
その拍子に床へと転がったリコーダーの音を聞きつけて、教師が視線をこちらへ移した。

人がキレる瞬間なんてものは、こんな世界に生きていれば何度でも目の当たりにはしているけれど。
本当に、“キレる”音が聞こえるのではないかと言う程、その教師の表情は瞬間的に変化し。
近寄る足音はいつもよりも大きく。
俺に近づいて来た。

「ごくでらああ!!!」

大声で怒鳴られた俺の名はその教室、音楽室に響き渡り。
防音設備の整っている場所で良かったと、他のクラスのことを思う。

「…んだよ。」

普段ならそんな教師の言うことなんか無視をして、その場を去る俺だったが。
今日はどうしても、人ごみから離れたくなくて。
きっと説教もすぐに終わるだろうと、やり過ごすことにした。

それでも、思ったより長く続く説教。
クラスの奴らはここぞとばかりに周りの奴らと話をし始め。
リコーダーを咥えては、曲にならない耳障りな音を鳴らしていた。

右から左へと流れる教師の声。
それでも話を続ける当たり、相当な根性の持ち主だと少しばかり関心する。
そうして一通り、言いたいことを言い終えたのだろう、溜息を1つついて。

「罰として、今日の放課後、音楽室の掃除をしなさい。」

そんなことを言い放った。

「は?!」

自分でも分かるくらい、眉間に皺を寄せて、俺は抗議をしたが。

「ご、獄寺くん…っ!」

焦る10代目の顔色を見て、これ以上騒ぎを大きくしてはいけないと悟り。

「…わかったよ。」

俺は承諾の返事をした。


それに満足したのか、教師は再び教壇に立ち。
授業の続きを行う。

曲名、作曲者の確認。
臨時記号の指使い。
一通り説明し終えた後、教師はピアノの椅子へと腰掛ける。

はい、という合図と共にクラスメイトはリコーダーを吹き。
合奏。

そして、授業は進み、終了のチャイムと共に俺たちは音楽室を後にした。




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