8059・その他
□輝く思い出
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オリキャラ注意です;;
淡い夏の思い出は。
きっと、いつまでも
心の中に。
【輝く思い出】
いつものように、というか、夏休みに入ってかれこれ2週間。
俺は毎日のように、竹寿司に入り浸っていた。
竹寿司、というよりはその上にある、奴の部屋に、ではあるのだけれど。
とにかく毎日、夏休みの宿題だなんだと理由をつけてはそこに上がり込み。
気がつけば、日が暮れるまでそこに居て。
挙句の果てには晩飯まで世話になる毎日が続いていた。
「獄寺!ここ、わかんねー!」
だから、今日もそう、いつものように。
俺はここに居て。
奴、竹寿司の1人息子、山本武の部屋にある小さな机で、一緒に夏休みの宿題を片付けている。
「…ちっとは自分で考えたのかよ。」
「考えたって!でも、どうしてもわかんねー。」
が、山本は生粋の野球バカ。
俺の宿題は進むことを知らず、気がつけば2人で山本の宿題を解いていく、という流れが出来上がるのが常。
今日も今日とて、それは変わらず。
「見せてみろ。」
初期の段階でつまずく山本の問題集はまだ、殆ど白紙の状態だった。
俺にしてみれば難しくもない、いや、寧ろ簡単な問題を。
この野球バカが納得するように教えるにはどうすればいいか。
そんなことを考えながら問題集を眺めていると、トントン、というノックの音と共に山本の親父さんが顔を出した。
「おい、武、獄寺!お前ら、今日の夜暇か?」
そしたらそんな笑顔で親父さんはそんなことを言って。
「俺は暇だけど、獄寺は?」
「俺も別に、予定はない。」
そう返す俺たちに、1つずつの布を手渡した。
「なんだよこれ…着物?」
その布を広げてみれば、白に黒の線で葉が描かれた薄い着物。
確か、浴衣とか言った、日本の夏服。
「…で、俺は甚平?」
隣の山本はと言えば、黒に白の線で同じような模様の描かれた布を握っていて。
だけど形が少し違っていた。
「んだよ、それ、ジンベイって。」
浴衣のように見えたが、どうやらそうではないらしい。
ジンベイというその服をじっと見つめていると、それに気付いたらしい山本が俺を見て。
「獄寺、こっち着る?」
そう、言葉を掛けられた。
「着るって…着て、どうすんだよ。」
「ああ、そうか。何すんの、親父。」
そもそも、の理由を聞いていない俺たちは親父さんに尋ねる。
そしたら親父さんは満面の笑みを見せて。
「俺の実家の近くでやる夏祭り。そこに連れて行ってやって欲しい奴がいるんだよ。」
そう、言葉を繋いだ。
「連れて行って欲しい奴?」
心辺りがないのか、山本も頭に?を浮かべる。
「みいちゃん、覚えてねえか?俺のダチの娘さんだ。」
「みいちゃん?」
「3歳の女の子。」
「3歳?!」
その後の親父さんの話によれば。
親父さんの実家の近くで行われる夏休みを、親父さんの友だちの娘、3歳のみいちゃんが随分楽しみにしていたらしい。
だが、そのみいちゃんの母親がもうすぐ2人目の出産だそうで、実家に帰っていて。
父親はと言えば、今日はどうしても外せない仕事があるそうだ。
「だから、連れて行ってやってくんねえ?」
親父さんが今度は少しだけ申し訳なさそうな声で言うと、その後ろからパタパタ、と足音がした。
「お!みいちゃん、支度できたのか!」
そこに居たのは、黄色の浴衣を着た小さい女のガキ、みいちゃん。
ふたつに結った髪がぴょんぴょんとはねていて。
表情は少しだけ、強張っているように見えた。
「な?」
そんなみいちゃんの様子を見て、親父さんは俺たちに念を押した。
「俺は別に…いいけど。」
獄寺は?
親父さんの説得に負けたのか、みいちゃんを見てかわいそうに思ったのか。
山本はそう返事をして、俺の方を向く。
「別に。」
そんな山本の顔を見て、俺も、肯定の返事。
「よし!じゃあ決まり!みいちゃん、この兄ちゃんたちが祭り、連れてってくれるってよ!」
「ほんとうに?」
俺たちの決断を聞いた親父さんはみいちゃんに笑顔を見せて。
そうしたらみいちゃんも少しずつ笑顔になって。
「よろしくね、おにーちゃんたち!」
俺たちの元に駆け寄って来た。
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