8059・その他

□甘い白
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愛の言葉なんて。

いらないと思っていたのに。


【甘い白】


「…っ!」

ドン、という鈍い音が部屋に響く。

自分の頭が壁に打ち付けられた音なのだと、理解するのに数秒の時間が掛かった。

それ程までに強く打ちつけられた後頭部には、生暖かい感触が見受けられ。
血を流しているのだと悟った頃には少しだけ。
意識が遠のいた。

鷲掴みにされた前髪の付け根には痛みが走り。

それにより意識を取り戻しはしたのだけれど。


そのまま気を失っていた方が良かったと、すぐに後悔した。



これほどまでの、屈辱を受けるくらいなら。


「骸くんさぁ…、いい加減何か言いなよ。」


目の前の男が、倒れ込んだ僕に目線を合わせるようにしゃがみ込む。

その目はスッと細められ。

見つめられただけで、僕の体は恐怖を覚え、萎縮してしまった。

そう、この後この白髪の男、白蘭に与えられる、快楽とはとても言い難いその行為を予測して。


「もしかして、聞こえてないの?」

白蘭はそう言うや否や、僕の着ているシャツに手を掛けて。

肌を露わにされたその場所に手を添えたかと思うと、そのまま、僕の体を這い回った。

先程頭を強く打ったせいで、僕は体を上手く動かすことが出来ず。

されるがままになるしか術はなかった。

それでも、せめてもの抵抗をと、白蘭を睨んではみたのだが。

「…まだそんな態度取るんだ…」

呆れた顔を見せた白髪は、そんな僕の態度が本当に気に食わなかったのか、

「…っ!!」

ドン、ともう一度僕の頭を壁にぶつけた。

「いい加減素直にならないと、本当に怒るよ?」

きっと、“もう怒っているだろう”という言葉などは通用しない。

何を言っても無駄なのだ。


あれから。

そう、全てはあの日から始まった。

この僕が、この白蘭に負けたあの日。

監禁生活を余儀無くされたあの日。



もうあれからどれくらいの月日が流れたのだろうか。

朝も昼も夜も関係なく。
この男は気に入らないことがあるとすぐ、僕の元へとやって来る。

部下が失敗をしようが、ボンゴレが何かを仕掛けようが。
その中身はまるで関係ない。

ただ己の苛立ちを発散させるためだけに。

白蘭は僕を、抱く。



否。
"抱く"と表現するにはあまりにも。

その中身は非情極まりないもので。


僕に与えられるモノは快楽などでは決してなく。
ただの、屈辱。



「…ぁ…っ」

「なんだ、声出せるんじゃん。」


我慢しきれずに、漏らした僕の声を聞き。
白蘭は口角を高く上げて笑う。

そうしてその両手で僕の顔を包み込み。

そのまま、口付けた。



入り込む舌はほんの少しだけ、甘い味がして。

薄れる意識の奥でそれを味わった。


味わえば味わうほど、それは甘味を増し。


無意識に離したくないという意識が働くような感覚に襲われた。


そんな僕の想いも虚しく、白蘭の唇は僕を離れる。

次にその感触が触れたのは、首筋。
歯を立てられるほど、強く吸われ。

きっとその場所には色濃く鬱血の痕が残っているだろうと自覚させられた。


「…っ…」

部屋に響くのは、声にならない僕の声と。

首筋から徐々に下ろされる白蘭の舌音。


段々とその音は消え行き。





僕はそのまま、意識を手放した。






夢の中。
懲りずに現れた白い髪。

その微笑は柔らかく、
澄んだ瞳は僕を映し出す。


「好きだよ、骸くん。」


決して発せられることのない言葉は。


僕の耳に纏わりついて、離れなかった。




END





初(日記には書きましたが…)白骸。
なんか、尻切れトンボみたいな話ですいません…;;

酷いことをされているんだけど、心のどこかで白蘭の存在が大きくなっていく骸さん。
白蘭もいずれ、骸くんが大好きになっていればいいと思います。

ここまでお読み頂き、ありがとうございました。


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