8059・その他

□このまま、あなただけ
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【このまま、あなただけ】



「なぁ、獄寺?」


ベットの上で、2人して並んで。

休日の朝を迎える。


昨日は学校の授業が終わって、そのままここへ来て。

部活に参加するこの部屋の住人よりも、早くここで寛いだ。


いつものごとく、親父さんにも声を掛け。

また来たのか、なんてアイツそっくりな笑顔で手を振られた。

いや、アイツよりも親父さんが早く生まれた訳だから。

アイツが親父さんにそっくりなのか…なんてくだらないことも考える。


「…んだよ。」

呼ばれた相手の顔を見ることもせず。


部屋の天井だけを見つめて、返事をする。


「こっち向いて?」


そんな俺の態度が気に入らないのか、アイツ…山本は俺の腰に手を回し。

無理矢理向かい合わせになるよう仕向けた。


「…なに。」


ばっちりと目が合ったことが恥ずかしくて。

ついつい尖った言い方をしてしまう。



本当は甘えたくて甘えたくて仕方がないのに。

どうしても素直になれない。



「お前さ、彼女とか…いたことあるのか?」


そんな気持ちをどうしようかと迷っていると、突然、山本はそんなことを尋ねて来た。


「…女?」

「そう。女。」


そんなこと、聞かれても、と思う。

自分はまだ中学生で。

日本でいう義務教育とやらを受ける身で。

そんな俺に女なんて…。


「ねぇよ。」


ある訳がない。

「本当に?」

「本当だよ。」


嬉しそうに笑うその顔を見て。

本当にズルい、と思う。

所謂、俺の初めての相手が自分だということに喜ぶその顔。

嘘、偽りなく、俺を愛しているその顔。

そんな顔。

山本に出会って、初めて知ったから。


そんな顔を見て、俺は心底山本に惚れているんだと実感するから。



ズルい。



だって、自覚してしまったら。



欲しくなるんだ。

山本の全部が。




少しだけ身を乗り出して。
その唇に口付ける。

少し開いた隙間から舌を入れて、山本のそれと絡める。

そしたら山本はそれに反応して。

俺の口内を犯した。


「…っ、てめぇは…どうなんだよ…っ…」


そんな口付けを交わしながら尋ねる。

「ん?」

それに答えるつもりはないのか、山本は口付けを止めようとはしない。

そんな山本に翻弄されて、別にいいかと思う頭が存在して。


だけど、どこかで気になるのも確かで。


しばらく、その口付けを堪能してから、また尋ねてみた。


「てめぇは…いたのか?女。」


そうしたら、山本は少し動きを止めて、右手で頭を数回掻いた。


「怒らねぇ?」


何かを誤魔化すように笑う山本を見て、居たことがあるのかと悟る。


「そうかよ。」


わかった、という意味を込めて返事をすれば、山本はまた、今度は軽く、俺に口付けて来た。


「一瞬だぜ?一瞬。告白されて、別にいいかって付き合って。でも、1ヶ月くらいで別れた。」



言い訳がましいというか何というか。

こういう時の山本の笑顔は胡散臭く思えるから不思議だ。


「だからんな怒んなって。な?」


俺を宥めるように頭を撫でて、また胡散臭い笑顔を見せる。


「別にいいけどよ。」


素っ気なく返事をした俺を、山本はその大きな腕で抱きしめた。


「…っていうか、俺そいつとヤってねぇし、キスもしてねぇぞ?」


そしたらそのまま耳元で、山本がそんなことを言って。


俺は一気に顔が熱くなるのを感じる。



やってない?

何も?

キスすらしてねぇの?


「1ヶ月も付き合ったのにか?」



もしも、本当にその女と何もしていないのなら。


山本の初めても俺だということになる。


初めて口付けを交わした相手が俺で。
初めて肌を重ねた相手が俺で。


もしも本当にその通りなら。


俺はどれだけ幸せ者なのだろうか。


愛した奴に初めてを捧げて。

愛した奴の初めてを貰って。



こんな思考、女々しいもいいとこだと思うけど。


それでも、喜ばずにはいられない。



だから。

だからこその確認。



「1ヶ月しか、だろ?」


そんな短期間で、普通何も発展しねぇよって山本はまた笑う。


「俺には二週間で手ぇ出したのに?」


思い出せば本当に。

あっという間だった気がする。




だから、きっと山本は手の早い奴なんだと思っていた。



「それ程好きだったんだよ、獄寺が。」


そしたら不意にそんなことを囁かれて。




ああ、本当に愛されてる。


またそう感じた。




俺たちはまだまだ子どもだ。

これから何があるか、本当にわからない。



だけど。


俺は。



いつまでも、山本の側にいたいと思う。


それが許される限り、永遠に。



「…俺も、すき。」



初めての相手が、お互い男なんて。


どう考えたって、普通の道じゃねぇ。

だけど。
だからこそ。


信じたいんだ、永遠を。



「キス、してもいい?」

「今更聞くな、馬鹿。」



このまま、1人の女も抱かずに。



山本の側で果てたいと強く願った。





END







初!携帯で書きました。

もう、この2人はオフィサルです。
最高です。

いつか、JOYネタが書きたくて仕方ないです。

お粗末様でした。


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