8059・その他

□至福のとき
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ツナの話を聞くと、呼び出しは放課後らしい。
職員室で、英語の担当教師と話をするそうだ。

…きっとまた、成績のことで怒られんだろうな。

そんなことを心の片隅で思いながらも、俺の意識は全く別の方へと向いていた。

「10代目!」

血相変えて、俺たちの元へ駆けて来るそいつ。

獄寺隼人の方へ。



「ご、獄寺くん!」

見つかった!っと言わんばかりの顔で、ツナが獄寺を見る。

「呼び出し、くらったそうで。俺、待っときますから!」

「い、いいよ…別に…。」

大声でそんなことを言う獄寺を静止させたいのか、ツナは慌てて言葉を返す。
それでも怯まない獄寺は、頑張って来て下さいね、とよく分からない応援をした。


そうしていくつかの授業を受けて。

あっという間に、放課後を知らせるチャイムが鳴った。



「ツナ!」

とぼとぼと、それこそ周りに黒いオーラを携えて。
教室を出て行こうとしたツナに声を掛けだが。

ツナの耳には全く届いていないようで、そのままスタスタと職員室へと向かって行った。


「10代目!」

その後を追いかけようと、獄寺は急いで帰りの支度をする。

そして、その支度が終わったのか足早に教室を出て行った。

職員室へ行ったところで、ツナには会えないだろうに…とは思ったが。
これがアイツの言う“右腕”というやつなのかと思うと、その行動にも納得がいく。

アイツは本当にツナを慕っているのだと、再確認し。
それと同時に、少しばかりの嫉妬心が形を見せた。


「…俺も馬鹿だな…。」

自嘲ぎみに呟いて、俺も教室を後にした。

今日もいつものごとく部活はあるけれど。
その前に少し。
職員室前にいるであろう、アイツに会いに行く。


ほんの10分くらいだとは思うが。

至福のときを味わうために。


「獄寺。」

想像していた通り、獄寺は職員室前で1人、ツナを待っていた。

「…んだよ。」

俺を確認するなり睨み付けて来るその顔は、相変わらずというかなんというか。

本当にツナ以外には心を開かないのだと感じた。


「暇じゃねーのか?」

「…別に。」

「暇そうだけど?」

「お前には関係ねぇだろ。」


関係ない。
そう言われればそうなんだけど。

それでも、俺はここを離れる訳にはいかなかった。

こんな絶好の機会を。
易々と見逃すほど、俺も馬鹿じゃない。


いつもツナと一緒にいる獄寺と。

二人きりになれる時間など、皆無に等しい。

その中で唯一。
今回のように、ツナが教師に呼び出しをくらったときだけが。
獄寺と二人きりの時間を過ごすことが出来る時間なんだ。



…俺が、獄寺にそういう気持ちを持ったのはいつだったか。

とても前のように思えるし
つい最近のようにも思える。


強がっていても、どこかギリギリのところで立っているアイツ。
いつかその足場が崩れるんじゃないかと思ったとき。

俺の心はアイツに持っていかれた。


それからは。
いつもの怒った顔も、時折見せる笑顔も。

全てが愛しいと感じた。

山本、と俺を呼ぶ声を。

何度も聞きたいと思った。



気持ちを伝えるつもりは更々ないけど。

それでも、もう少し。

側にいたい。



「…何してんだよ。」


無言のまま、俺は獄寺の横に立ち。
一緒にツナを待つような格好で並ぶ。

何をしていると言われれば。
獄寺を見ているのだけど。

そんなことを伝えられるはずもなく。


「いや、俺も待とうかと思って。」

いつも通りの笑顔を見せた。



そこからは。

二人して無言で時を過ごして。


そろそろ部活に行かねぇとまずいな、と思いながらも。
そこから動けずにいた。


そして、どれくらいの時間が経ったのか。


職員室の扉が開いて。

ツナが出てきた。



「10代目!!」

ツナの顔を見た瞬間に獄寺は笑顔になって。
その元へ駆け寄る。

この笑顔が、俺に向けられることはないのだと、思い知らされたけれど。

それでも。
この笑顔を見ていたくて、俺は2人の様子を眺めていた。


「山本、部活は?」


俺の存在に気付いたツナが、当然の疑問を俺へぶつける。

「いや、今日はちょっと体調悪くてな。」

休もうと思ってるんだ。


獄寺の笑顔見たさに、口からでまかせを言ってしまって。


そうか。今日は休むのか。
と、何故か他人事のように認識した。


「…一緒に帰るのかよ。」


そしたら獄寺がまた、不機嫌そうな声で俺に問う。

ツナと2人が良かったのだろうが、仕方ない。
俺だって成り行きでこうなってしまったのだから、今日だけは、我慢してくれ。


それに。
俺にしてみたら、たった数分だった至福のときが。
帰り道の分だけ増えたんだ。

嬉しくないと言ったら嘘になる。


「大丈夫?」

と俺を気遣うツナには申し訳ないが。


俺は内心わくわくしていた。

今日はどんな獄寺が見れるのか。


「大丈夫だって。ちょっと風邪ぎみなだけだから。」


そこまで考えて。
明らかに俺は変態だと思った。



ツナを慕う獄寺。
ツナに笑顔を見せる獄寺。
ツナを命がけで守る獄寺。



きっと、いや絶対。

俺はツナにはかなわないけれど。



思うだけは自由だから。

もう少し。

もう少しだけ。





「じゃあ帰るか!」



色んな感情を内側に隠して。


俺はまた、笑顔を見せた。







END






初、山獄!!
っというか、片思いですが…;;

やっぱり、これもオフィサルだと思います。
相方さんは、あまり賛成してくれませんが…!!(笑)

なんだかんだ、一緒にいる2人。
嫌いならそこまで一緒にいれないと思います。

いずれは武、隼人呼びでお願いしたいです(笑)

それでは。
お粗末さまでした。
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