季節物

□あなたに会える日
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あなたに会える日



「ねぇ、今年の春分の日って何日だっけ?」

彼女の言葉に、手帳を開けば、今日の文字が赤い。

「今日だな……。どうかしたのか?」

「ん…。ちょっとね。」


珍しく覇気のない声と同時に、彼女が立ち上がる。
不思議に思って目で追うと、数歩歩いた所で彼女が立ち止まり、振り返った。


「今日アタシ用事あるから。
アンタ達は2人でピカチュウGET頑張ってね。」

笑うその顔はもういつもの彼女で、返す言葉も見つからないうちに、彼女は2人の前から去った。


「ニャ、ムサシのヤツ、何か変だニャ。」


そう思わないか?と視線を向けるチームメイトに、困った顔を向けて、彼はどうしようと呟いた。


〜・〜・〜・〜

「ねぇ、ムーちゃん。御先祖様のトコ行こうか。」

「ごせんぞさま??」

街へ向かう道すがら、思い出すのは幼き日のこと。

あの頃は、まだ、他人から、周りの大人から愛されるのは当然のコトだと思ってた。


「ここにはね、死んじゃったムーちゃんの、おじいちゃんのお父さんやお母さんがねんねしてるの。」

「おばあちゃんもココにいるの??」


墓標の前で、どこか期待に満ちたまなざしで問い掛ける幼子に、「おばあちゃん」が誰を指す言葉か理解しているその子の伯母は、どこか困ったように「ここにはいないのよ。」と笑った。



幼かった自分を養ってくれた曾祖母と死に別れてほんの1ヶ月後の出来事。


結局、その伯母とは経済的な理由で半年後に別れることになってしまったけれど、あの日貰った言葉が今でもこうして彼女を動かしている。



――ムーちゃんのおばあちゃんはね、お空の、一番綺麗な雲の上にいるの。
今日は伯母ちゃんと一緒におはぎ食べながら、おばあちゃんに、いっぱいお話聞いて貰おうね―――



スーパーマーケットでおはぎを買って、会計を済ませた所で聞き慣れた声が耳に入る。

バレないように気をつけているつもりだろう。
押すな。だの、見えニャい。だの、これだけ騒いでて、気付かれない訳がないのに。

フッと笑みを零した彼女は、大きく息を吸うと、声を張り上げた。


「アンタ達、ピカチュウGETはどうしたのよっ!!」

「うわぁっ!!」

「バレバレだニャっ!!!」


ねえ、おばあちゃん。今回もね、話したいことがいっぱいあるの。

追いかけてるピカチュウのこと、そのピカチュウのトレーナーとゆかいな仲間達のこと、

一緒にピカチュウを追いかけてる、大好きな人達のコト。


「もう良いわよっ!!
働く気がないなら……一緒に来なさい!!!」


ね、今年はね、空が綺麗に見える丘に、皆と一緒にのぼろうと思うの。


おばあちゃんも皆に会ってくれる?


きっとね、おばあちゃんも気に入ってくれると思うの。



―――ねぇ、みんな、アタシね、今、凄く幸せだわ。







2009年3月19日 よしー




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