季節物

□まめまき。
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「さて、」

テーブルの上に豆の入った升ひとつ。


「じゃあこれから豆まきするとして鬼は……」

「駄目ニャ!!」


誰がする?という彼の言葉をまたずして、猫が待ったをかけた。


「せっかくの豆を撒くなんて、勿体ないニャ!!」


いつもお腹を空かせている彼等だ。
猫のこの言い分はもっともなのだが、それでは……


「それじゃあ、駄目だろ!!やっぱ行事ごとはそれなりにこなさないと!!」

「行事のせいでまたお腹ペコペコかニャ?!それは色々おかしいニャろーがっ!!」

食べ物が関わると人間恐ろしくなると言うが、それはポケモンにだって当てはまる。


がっ!ざらっ…


もぐもぐもぐ。

「あぁっ!!」

「ムサシ、おミャー、ニャんてことを!!」

無造作に升の中に手を入れて、豆を一掴み。そのまま自分の口に放り込んだ彼女は、勝ち誇ったようにこちらを見ている。


ごっくん。


「ふぅ…福は内。」


ぽかんとこちらを見ている二人の前で、さらりと言ってのけた。


「なっ…!なにやってるニャ〜っ!!」

「そっ、そうだぞっ!!ずるいぞムサシっ!!」


「何言ってんの。
アンタ達がいつまでたっても訳の解んない言い争いしてるから先に始めただけでしょう?
だいたいニャース、なんで豆撒きが勿体ないのよ。」


………。


彼女の目は、本気だった。


「えっと〜、ムサシ?豆撒きってどうやるんだっけ?」


「へ?何よ今更。
福まめを体内に取り込んで福を呼び込むんでしょ?」


「じゃっ、じゃぁ、鬼はどうするのニャ?」

「へ?」


猫の問い掛けの意味が、彼女は本当に解らないようで……、



「ほら、良く聞くニャろ?鬼は外、福は…」

「何ソレ?!鬼を外に追い出すって言うのっ?!そんなことしたら可哀相じゃないっ!!」


………。


「いや、ムサシー、多分、節分の鬼って言うのは、厄災とかそう言った類いのものであって、本物の鬼じゃ…」


「は?何言ってんのよ。厄災なんて、祓おうが何しようが来る時は来るわよ。」

「や、まぁ、そうなんだけど…」


「はい。解ったら豆まき。」


言って彼女は口の中に豆を放り込む。




ふくはうち、ふくはうち。




鬼なんか祓わなくたって、みんなで一緒に福を呼び込めば、




大丈夫。



どんなことだって乗り越えて行けるわ。











2009.02.03

よしーかなこ。

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