季節物

□今年も、きっと。
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「紅白見るんだーっ!!
日本人の大晦日と言えば紅白だろっ?!」

「いーやーっ!!時代は変わったのっ。
K-1だって立派な文化でしょっ?!
だいたい紅白はカメラワーク地味過ぎんのよっ!!
みーたーくーなーいーっ!!」

「おミャーらニャにを言うニャ!!
大晦日と言えばドラえもんニャ!!
これは幼い頃刷り込まれた人として当然の心理ニャ!!」

年末年始は毎年、仕事は休むと決めている。
少ししっかりとした小屋を探し(なければ作り)落ちてるTVなんか探し(なければ作り)
おせちが無理でも、せめて人並みの食材は用意して、年越しそばは絶対食べる。

そこに生まれるのは人並みのシアワセと、人並みの、

「「「さーいしょーはグー!」」」


チャンネル争い。



「あー、もー。普段はヘタレのクセに余計なコトは強いんだから。」

「ドラえもん、見たかったニャー。」


TVに映る華やかなホールを食い入るように見つめつつ、彼らは悪態をついた。
なんだかんだ言って、最後まで3人で見るんだろうが、流石に勝者は少し申し訳なくなる。

「まぁまぁ。
俺、そば作るよ。食べるだろ?」
「「食べるっ!」」

間髪入れずに返ってくる返事に笑みが零れた。



結局、コジロウが台所に立ってもTVのチャンネルが変わることもなく、もうすぐ、今年も終わり。


いつの間にかTVからは除夜の鐘が響いていた。


「チャンネル変えるか?」

「良いわよ。このままで。」


華やかなものが好きな彼女に気を使って彼が声を掛けるも、返ってきたのは意外な返事。


「カウントダウンしないのニャ?」


ニャースも、彼女の言葉に驚いてぽかんとしている。


「別にここで3人でしたらいいでしょ?」


言って彼女は時計を取り出した。

彼女の真意は解らないけれど、彼らも人並みにカウントダウンはしたいので彼女のまわりに集まる。

「あ、もうすぐよ………………10、9、8、7、6、5、4、3、2、1、」


「「「ハッピーニューイヤー!!!」」」

「ソーォナンスっ!」

狙っていただろうタイミングで出てくるソーナンスに、笑い声が響いた。


ムサシとコジロウが顔を見合わせる。


「「みんな、出ておいで!」」


現われる仲間たちに新年の挨拶。
普段は前日の24時台として処理される時間帯なのに、今日に限っては、ほぼ100%の人が0時台として扱う。
そんなアタリマエに参加出来る時間が愛しい。

アタリマエに新年の挨拶をして、アタリマエに皆で眠る。

今年もきっと色々痛いめ見るだろう。

でも、きっと皆一緒なら大丈夫。人並みにシアワセなはずだ。




新年を迎えたタイミングは、もしかしたら世間とずれていたかもしれない。

でも、3人一緒に迎え入れた年だから。


今年もきっと「いい感じ」







2008年12月31日
静岡にて よしー

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