季節物
□策略にのって
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｢…どうするかな……。｣
マシュマロ、キャンディ、クッキーと、おなじみのラインナップにならんで、今年はバレンタインの残りかと疑うようなチョコレートの詰め合わせも多い気がする。
1ヶ月前、嬉しそうに笑う彼女と2人で食べたチョコレートは幸せで溶けそうなくらい甘くて、ついチョコレートに手を伸ばしたくなるけれど、それじゃダメだと理解している。
悔しいけど2週間前、3人で食べたあられの方が幸せそうに笑ってた。
そう、チョコとあんこは御法度。
｢あ、忘れてた。｣なんて言ってチョコレートを用意した日には2人揃ってヘソを曲げるだろう。お菓子の用意を自分から買って出た以上欲望に忠実にというわけにはいかない。
｢キャンディが本命でマシュマロが義理…いや、キャンディが義理でマシュマロが本命…？｣
昔どこからか入ってきた情報を裏付ける情報を得ようと検索をかければ、特にこれという決まりは無いようで、それじゃあローカルルールや作家の創作でいくつもの文化があるのだろうと容易に想像ができた。
彼女のルールはどんなものだろう。
貰ったチョコレートは完全に義理なのに、こんなこと気にするなんて、どうかしてるとしか言えない。
理解はしてるんだ。
でも、ずっと好きだった人から初めて貰った、しかも２人きりで一緒に食べた義理チョコなんだから、ちょっとくらい浮かれて気合い入ったって許されると思う!!!
いや、許されるべき!!!!!
本当はアクセサリーとかプレゼントしたいくらいの舞い上がりっぷりだし！
彼女の中にあるルールがわからない以上、マシュマロやキャンディは避けるべき所か。
それよりも、普段は食べないようなちょっと特別感のあるお菓子で本命アピールを…!!!気付いて貰えないけど！自己満足だけど!!!
マドレーヌ、パウンドケーキ、フィナンシェ、焼き菓子の詰め合わせなんかも悪くないかもな。
あっ!!マカロン!!!両手でマカロンを口に運ぶニャースとムサシは絶対に可愛いぞ!!!
でもちょっと値が張るからたくさん用意するのは難しいな。量が多い方が絶対喜ぶよなぁ…。しかも、値に対してそこまでの高級感が無いのがな。もっとわかりやすい方が良いだろう。
うーん…満足いく量で特別感のある物…って、
あ！！！
売り場を見渡してふと思い立った。ホワイトデーの特設コーナーに拘るから見えなかったんだ。
特別感も満足感も兼ね備えた物。
これ以外ないだろう！
｢ただいま〜!!ホワイトデーのお菓子買ってきたぞー。みんなで食べようぜ。｣
｢おかえりーっ!!何々？何買ってきたの？｣
｢早く食べたいのニャっ!!｣
キラキラ瞳を輝かせて出迎えてくれた２人に自信満々箱を見せつけると、２人も中身は理解したようで、これ以上はないと思ったその表情が更にキラキラと輝く。
｢｢ケーキっ?!｣｣
｢ワンホールまるごと買ってきた！｣
｢ニャーっコジロウ太っ腹なのニャ!!｣
｢早くっ開けて開けてっ!!!｣
そう言ったムサシの手には既にフォークが３本握られていて、その素早さに笑顔が零れる。
｢じゃーん!!｣
箱を開けた後聞こえた歓声はひとつだけ。
………あれ？
｢すっごおぉい!!チョコレートケーキ!!コジロウ、偉い!!!｣
ムサシが、すごく喜んでくれて、嬉しいは嬉しいんだけど、
｢…ニャース？どした？｣
｢…………。だから、
ニャーはチョコレートは食べられないのニャっ!!!｣
ばたんっ!!
荒々しい音を立てて、ニャースは部屋を後にした。
｢ほら、コジロウ、いつまでしょげてんのよ。あーんして。あーん。｣
ちゃっかり口を開けてムサシにケーキを食べさせて貰った後、口を開く。
｢いやこれ、結構キツい。｣
｢仕方ないわよ。チョコレートケーキもチョコレートだからニャース食べられないなんて、思わないって。｣
｢いや、だって俺最初にチョコとあんこは絶対NGって心に誓ったのに。｣
もぐもぐ口を動かしながらも、ムサシはうん、うん、と頷いてくれる。
｢浮かれてて、本当バカだよ俺。何ならムサシが喜んでくれるかなってそればっか考えて、ニャースの事なんか頭になくて…｣
頭を抱えて突っ伏せば、優しい声が降ってきた。
｢ありがと。｣
｢本命だなんてムサシはどうせ気付いてくれないんだから、無難に焼き菓子の詰め合わせでも買っとけば…｣
｢……………え？｣
しまった!!
思って伏せていた顔を上げた時既に遅し。
彼女の頬は朱に染まっていたのだった。
*****
無難にバレンタインの続き。
バカ可愛いを目指したパート２。
マカロンのコスパの悪さは異常と思うんだよね。手間がかかるのは理解できるし、１つでお腹もそこそこふくれるんだけど、なんか、5つ位で簡単に1000円こえると｢えーっ(´д｀;)？｣って思う見た目してない？