笑顔(改修版)
□第2話
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―携帯の件から数週間後―
夏休みが終わったものの、まだ夏休みボケをしている生徒がいる9月上旬…
「…であるからして、2学期からは今まで以上に気を引き締めてください…以上です」
「ふぅ」
長い長い教頭の締めの挨拶で職員会議が終わり、俺は小さく溜息をついた。
そのとき、
「佐野先生」
「はいっ」
いきなり教頭に呼ばれ、ビクッと体が震える。
「少しいいですかな?」
「はい…なんでしょう?」
教頭は俺を指導室に入れ、
「木下恵はどうでしたか?」
「はい?」
いきなり木下の名前を出されて、意味が分からず、聞き返す。
「木下がどうかしたんですか?」
「いえ、風の噂を真に受けるのもどうかと思いますが、木下恵が家庭内暴力を受けていると…」
「…」
`家庭内暴力`という単語を聞いて、俺はあの日の木下の顔を思い出す。
「佐野先生は、夏休みの補習を監督してたそうですから…なにか、おかしな所はありましたか?」
「……いえ…特にこれと言ったことは…」
本当は言わないと駄目だと思うのに、なぜか木下の泣き顔が思い出してしまい言えなかった。
(…本当にどうしたんだろうな…俺…)
「そうですか…ですが…しかし、念のため目立たないように木下恵の様子を伺ってみてください」
「わかりました…では、私はこれから授業の準備がありますから」
そういって、俺は早々に教頭の元から逃げ 、科学準備室へと向かった。
準備室は職員室がある階の下にあるので、階段を下る。
ガラガラッ
準備室に入ると、そこには、アルコールの匂いや、科学室特有の匂いが俺を包み込んだ。
(う〜ん、この匂いは何年経っても慣れないな〜)
そんなことを思いながらも、俺はここが一番落ち着く場所だったりする。
「さて、授業の準備でもしますか」
俺は、1時限目にある授業の準備を始めた。
1年B組の授業の準備を…