俺と君(改修版)

□第2話
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今、俺の目の前には涙で目が赤くなった森山さんが紅茶をすすっている。

「おいしいです」
「ありがとう」


どうしてこうなったかというと、



10分前……


チャイムが鳴り、出てみるとそこには、森山さんが立っていた。

「あれ?えっと、どうして?」

今日初めて会った人がなぜ自分の家をという疑問が頭に浮かんだが、それよりも森山さんの手には旅行用の大きなバックが気になった。

「あの、えっと、住んでたアパートから追い出されちゃって…」
「…は?」
「えっと、学校には内緒にしてたんですけど、私、独り暮らししてて、えっと、家賃が払えなくなっちゃって、それで……」

話していくほど、恥かしさで小さくなっていく森山さん

「それだったら、親戚の所に行けば…何も俺のとこじゃなくても…」

と、当然の疑問を投げかけると、

「…居ません…」
「…」

表情が急に固くなる森山さん。
それを見て、この問いかけは禁止だと直感的に思う

「…じゃ、じゃあ…友達の家とか…」
「で、でも美香ちゃんの家にいつまでもお邪魔するわけにも行かないし、それに美香ちゃんがここに来れば…」

恥かしさでいっぱいになって、とうとう森山さんはうつむいて小さく泣き出してしまった。

(まいったな〜…。まったく美香って人は何考えてるんだよ…)

自分の友人を、面識のない人間…それも男子高校生の家に向かわせるなんて…
しかし、夜中にこんな追い詰められた状態の子を、外に出すわけにも行かず。

「まあ、今日だけは、うちに泊まっていきなよ」

俺の一言に、森山さんはバネでも付いているかのごとく、すごい勢いで顔を上げ、

「いいんですか!?」

涙でくしゃくしゃの顔に驚きの表情を一杯に浮かべた。

「ああ、いいよ。そこにずっといるのもなんだし、上がって」

家の前で泣き続けられると、いろいろと後が大変になりそうなので上がってもらう。

「あ、はい、お邪魔します」

森山さんを居間に行くように伝え、俺は何か暖かいものでも作ろうとキッチンに向かった。

「えっと、紅茶とコーヒーか…」

本当は暖かいスープでも出せればいいのだが、料理などをあまりしないので飲み物しか置いてなかった。
スープはあきらめ飲み物でも出そうと、どちらにすればいいか聞いてみる。

「あのさ、紅茶とコーヒー、どっちがいい?」
「え?あっ、きゃっ」

バタンッ

森山さんの小さな悲鳴と大きな衝撃音が居間に響いた。

「どうし……何やってんの?」

その音に、驚いて居間を覗いてみると…

「えっと、その、あの…」

お尻をさすりながら、目に涙をうっすらと浮かべている森山さんがいた。
その、姿がなんとも母性本能を…いや、なんでもない。

「あ、悪い、雑誌出しっぱなしだったな」

よく見ると森山さんの足元には、多分須藤が読み散らかした雑誌が散らばっていた。
それを軽く集めると、

「あ、いえ……あ!」

森山さんも慌てて本を集めてくれて、一冊の雑誌を見て声を上げた。

「ん?……あぁ」

どうしたのかと見ると、森山さんが持っている雑誌は踏んだせいだろう表紙が破けていた。

「あ、え、ご、ごめんなさい」

さっきまで涙目になっていた目が、さらに涙で揺れる。

「いいよ、もう読まないやつだから…それより、紅茶とコーヒーどっちがいい?」

雑誌を受け取って本棚にテキトーにしまいながら聞く、

「ふえ?…あっ、えっと、紅茶をお願いします」
「わかった、ちょっとまってて」
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