Novel

□June Bride
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 少しのあいだ黙って想像してみる。
 どこか遠くに派遣されることが決まったソウルを笑いながら送り出す自分はもちろん簡単に想像できたけれど、それ以上に彼がいなくなった家で寝起きしてご飯を食べて一人で死武専に出かける自分の方が、実は何倍も簡単に想像できた。

 そして想像の中の自分は、いつも少しつまらなそうな顔をしていた。

「ぁ……」
 『嫌』だ。
 はっきり思った。我儘だとはわかっているけれど、それでもそんな日常は欲しくない。

「うわぁ〜〜〜」

 かなり今更に感情に、思わず手すりに突っ伏した。

「本当、なんで今更……」

 意味の無い声を上げる私の肩に、椿ちゃんの手がそっと置かれた。
 私は突っ伏したままだから表情は見えないけれど、きっと困っている。

 ――と、
「あっ」

 と椿ちゃんが小さく言うのが聞こえた。途端なんだか少し慌てた様子で私に向かって小さな声で言う。

「マカちゃん――来たよ、ソウル君!」


「――は?」

 来た? ソウルが? なんで? なんでこのタイミングで?

 思わず顔をがばっと上げると、椿ちゃんはとりあえず私は行くね、と片手を上げて去って行ってしまった。確かにそのほうが話しやすい、話しやすいけれど!!

「つ、椿ちゃん…」

 椿ちゃんが去って行った会場の方を見ると、その背のもう少し向こうにこちらを見据えて歩いてくるソウルの姿があった。本当に来てる……。

 こうなったら意地だ、いつも通りにやってやる。別に貴方のことなんか露ほども考えていませんでしたという、そんな態度で。

 敢えて外の方を向いたまま、そう心に念じ続ける。近づいて来るのが気配でわかる。

「――マカ」

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