Novel
□June Bride
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「――来たぞ!」
誰かがそう叫び、群衆たちが一斉に同じ方向を向く。
現れたのは、真っ白な衣装を着た花嫁と、それに寄り添うように歩く花婿の行列だった。
沿道いっぱいの祝福を受ける二人は見た目も確かに麗しかったが、何よりも愛する人と結ばれたという幸福感が、彼らの輝きをより一層際立たせていた。
「…俺が、いつかアンジュの『王子様』になってやるよ」
そんな様子を見ながら、スパーダがぼそりと言った。
「その時が来たら、世界中どこにいたって迎えに行って幸せにするから」
その表情があまりに真剣なものだったので、アンジュは思わず笑ってしまう。
「な――、何で笑うんだよ!!」
「ふふ、ごめんなさい。スパーダ君が珍しく真面目な顔してるからつい……まぁ、そうね。せいぜい楽しみにしてるわ」
「絶対信じてないだろ…」
どうせ俺は不良ですよ、などとぶつぶつ呟いているスパーダをよそに、アンジュはもう一度遠くを見て言った。
「いいえ、――信じてるわ」