Novel

□June Bride
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「あ?何でお前がいるんだよ」

手一杯の書類の山を抱えて現れたクソ眉毛、もとい生徒会長様は、生徒会室のソファに行儀良く座っている私の顔を見るや否や、開口一番そんな事を言いやがった。

「明日は朝10時に来いって昨日言ったのはどこの誰ですか…」
「いや、それはそうだが本当に来るとは思わなかった。今日は休みなのによっぽど暇なんだな、お前」

その言葉に、一番暇なのはアンタだろ!と思わず叫びそうになるが、そこは自分でも驚くほどの忍耐力によって踏みとどまる。…私、この学園に来てからかなり気が長くなった気がする。
入学初日に突然手下にされ、こき使われ始めてからもう随分になるが、未だにイギリスには逆らえない。二言目にはすぐに「退学にするぞ」と脅してくるし、また彼ならそれができてしまうのも厄介だった。

それでも、最初の頃にはわからなかったこともある。
例えば、いつも偉そうで自己中心的に見えるイギリスだが、そんな彼が意外と仲間達から可愛がられていること。(てっきり友達ゼロだと思っていた)
それから、口も性格も最悪な彼に、案外優しい所があること。
…まぁ、そんな事はめったに無いのだけれど。

「おい、何ボーッとしてんだ。来たんなら仕事しろ、仕事!!」

少し呆けていたらしい私の頭を、イギリスは持っていた書類でぽんぽんと叩いた。
せっかくちょっと褒めてやってたのに、前言撤回。やっぱりコイツは最悪だ。

「…なにすればいーんですか」
「何でそんなにだるそうなんだよ。じゃあこれな、没収した雑誌類の検閲」

そう言ってドサッと渡されたのは、大量の雑誌。ファッション誌からいかがわしいものまで、ざっと50冊くらいだろうか。よくもまぁ、ここまでたくさん取り上げたものだ。(こっそり自分が読んでるんじゃないだろうか)
その中からどう考えてもダメなものを取り除き、残った数冊をぱらぱらとめくる。いかにもオンナノコが好きそうな本の広告の中に、目立つ見出しがたくさん踊っていた。

(ジューンブライド…)

のどかな島の出身である私だが、さすがにジューンブライドについてくらいは聞いたことがある。聞いた当初は「ふうん」くらいにしか思っていなかったが、それらの写真や煽り文を見ていると、急に『結婚』という言葉が現実味を帯びて感じられてきた。

(そうよね、私だって女の子だもん、ちょっとくらいは幸せになってもいいはずよ。いつか白馬に乗った王子様と結婚するんだから。あ、でもセーシェルの周りは海だから馬じゃなくて魚じゃないと来れない…そんなの絶対嫌!マグロに乗った王子様なんてカッコ悪すぎる!!)


「ん?何だ、お前でもジューンブライドなんて生意気な事考えんだな」

そんなアホな事を一生懸命考えていたものだから、後ろからイギリスが覗き込んでいたことに声をかけられるまで気がつかなかった。




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