Novel

□June Bride
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「やっぱり最初は男の子かな?でもイリア似の女の子とかも絶対可愛いと思うんだ!!あ、家は二階建ての白い家がいいなぁ!!海辺とかに建てたら景色も良くて最高じゃない?」
「ちょ、ちょっと待ちなさいよ!!何で私があんたと結婚することになってんのよ!!」

あまりに唐突なルカの話に、頭がついて行かない。
ルカを挟んで向こう側にある鏡の中には、明らかに混乱した表情の自分がいた。
当のルカはと言うと、頬杖をついてにやにやと此方を見ている。(あぁもう気色悪いわね!!)

「……嫌なの?」
「別に、嫌とかじゃないけど…」

って何言ってるのよ私!!!!
そこは普通に拒絶するところでしょう!?

「じゃあ決まりだね」

私の言葉をかなり前向きに受け取ったらしいルカは、とても嬉しそうにそう言うと、急にソファから立ち上がってこちらへ歩き、まだベッドの上に座っていた私の前に跪いた。
そして、ぽかんとしている私の手を取って、


「幸せにするよ、イリア」


――その手の甲に、キスをした。


「なっ…何してんのよバカッ!!!!!!」


びっくりした私は思わず、その頭を横から蹴り飛ばしていた。
思いっきり吹っ飛んだルカは、テーブルにぶつかって倒れたまましばらく返事もしない。

「え…あ、ルカ、大丈夫??」

さすがに少し心配になった私は、ルカの元に歩み寄って抱き起こし、
その"異変"に気がついた。

「ルカ…あんた酒臭い…」

どうやらルカは眠っているだけのようだったが、体からはかなり強いアルコールの匂いがし、その頬は赤く染まっていた。
どうしてこんな事になったのだろう、と部屋の中を見回すと、浮かんできた一つの心当たり。

「あぁ、あれってお酒だった訳ね…」

それはさっきルカが飲み干した瓶の中身だった。
慶事のサービスなのだ、店の人も未成年へアルコールを出すくらい構わないと思ったのだろう。

しかしそれならば先程のルカの言葉はどこまでが素面でどこまでが酔っていたのか。
直接聞いてみればわかることなのだろうが、「どこまでが本気だったの」なんてそんな恥ずかしい事聞けるわけがない。
つまりは、私はルカに振り回されてしまっただけなのだった。


「何なのよ……少し期待したのに」


思わず自分が口走ってしまった言葉に気づいてはっと顔を上げると、部屋の鏡に映った顔は腕の中の酔っ払いに負けず劣らず真っ赤だった。








そしてこの心臓は早鐘を打つ
(私の動悸を返してよ!)









→あとがき

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