Novel
□June Bride
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「ったく何なのよ!朝からうっさいわね!!」
部屋のベッドでごろごろしていた私は、遂に耐えられなくなって持っていたクッションを放り投げた。
それは見事にソファに座って本を読んでいたルカに命中する。我ながら素晴らしいコントロールだ。
危うく本を取り落としそうになったルカは、「いったぁ〜」と少々情けない声を出しながら私の方を向いた。
「どうしたの、イリア」
「何かずっと外が騒がしいのよ!お蔭で眠いってのに寝られもしない!!」
「それは僕のせいじゃないと思うんだけど…そういえば今日は結婚式があるらしいよ」
大々的だよねぇ、と笑うルカは突然そうだ思い出した、と呟くと、冷蔵庫の方へ歩いて行って茶色の瓶を取り出した。
「これ、宿のおじさんがくれたんだ。サービスだって」
そう言って栓を開け一口飲んだあと、イリアもいる?と此方へ差し出してくる。
「い、いらないわよ!バカ!!」
大体アンタが飲んだ後なんて飲めるわけないでしょ!
そっぽを向いたら、後ろでそう?と声がした。
――何でそんなに残念そうなのよ。
「そういえばさ、イリアもやっぱり結婚するなら6月がいいの?」
結局持っていた瓶の中身を飲み干したらしいルカが、突然そんなことを訊ねてきた。
「何で6月なのよ」
「だってジューンブライドじゃない」
「そんなもん別に気にしないわよ」
「何で?」
「結婚するのに時期とか気にするなんてばっかみたい。6月に結婚すれば絶対幸せになれるんなら、今頃世界は平和でしょうよ」
「まぁ、それは正論だよね」
だから別に7月だろうと10月だろうと構わないわよ、と私が言うと、ルカはふうん、と言ってそのまま黙ってしまった。
夢のない女だと思われただろうか。そう思うと、少しだけ胸が苦しくなった。(何で私がこんな奴のことで気を揉まなきゃいけないのよ!)
しかしそんな心配も、いきなり「ふふふ…」と不気味に笑い出したルカによってどこかへ押しやられてしまう。
「な、どうしたのよ一体…」
「ねぇイリア、
僕たちの最初の子供は、男の子がいいかな?女の子がいいかな?」
「……はい?」
一瞬、こいつは頭がおかしくなったのかと思った。